瀧本:外資系企業の経営スタイルがいいかというと、必ずしもそうではない。実際、外資系企業の中には、個々の社員の責任範囲が明確に決まりすぎていて、がんじがらめになっ ているケースも見られます。一部の日本企業のように、職務範囲があいまいで、そうであるがゆえに若い人がわりと自由に仕事内容を選べる環境はそんなに悪くない。その意味でも、いわゆる「日本型経営」というものが、みんながイメージする「日本型経営」なのかどうかを問い直す時期を迎えています。
筒井:そうですね。
瀧本:ただ日本の普通の会社は、あんまり変化をすることを求められていないので、ダラダラしてしまうところが問題です。上の世代の人たちの中には、「逃げ切れればいい」と 思っている人も多い。変化が義務づけられる仕組みを組み込むことができれば、「日本型経営」は新解釈されて、それはそれでうまく機能する可能性もありま す。
筒井:私もそのとおりだと思います。「日本型経営」という言葉を使うと、固定的なイメージに引きずられてしまうので、新しい呼び名が必要かもしれません。
ポイントになるのは、「変化をどうとらえるか」です。私は海外で7年間過ごす中で、変化し続けることが会社や個人の価値につながることを強く実感しました。たとえば日本では、自分の年間目標を定めるときに、昨年の焼き直しみたいなことを書いていましたが、海外では、そんなことは許されません。似たような目標を掲げていたら、「昨年から全然成長してないじゃないか。昨年と同じことをやるんだったら、君の価値は下がってしまうぞ」と言われます。つまり、 変化に対する考え方が、日本企業と外資では大きく異なるわけです。
瀧本:「変化こそ 価値を生む」という考え方は、「自ら機会を創り、機会によって自らを変えよ」というリクルートの社訓に似ています。リクルートはあれだけの規模の会社になっても、新規事業をバンバン作って、失敗も多くしていますが、何事もなかったかのようにビジネスをしています。そこは非常に面白いところです。
JTがグローバル化する中で、「多様性」も大事なポイントになりますね。
筒井:そうで すね。多様性と言っても、国籍だけにとどまらず、年齢、性別、宗教、個々のモチベーション、仕事とプライベートのバランスなど、さまざまな要素がありま す。JTインターナショナルのジュネーブオフィスには、約60カ国の国籍の社員がいてものすごく多様ですが、日本の本社はまったくのモノカルチャーです。 ジュネーブの職場に比べると、多様性に対する幅が狭い。日本でどう多様性を取り込んでいくかは、これから大きなチャレンジになります。
瀧本:日本には、「日本人はこうである。日本企業はこうである」という変なノスタルジーがあります。ただ、それは幻想であって、新しい多様性のモデルに変える必要があります。
筒井:確かにそういう面はありますね。だからこそ、その幻想に穴を開けていくためにも、実例をどんどん作って、成果を出して行かないといけません。
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