「楽壇の帝王」カラヤンが今でも愛されるワケ あえて「好き」とは言いにくいほどの人気ぶり

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中でも極めつけは、1955~1989年までの長きに渡って終身指揮者・芸術監督を務めたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との蜜月だろう。

世界最高の指揮者とオーケストラの組み合わせをイメージさせる「カラヤン指揮ベルリン・フィル」の金看板は、時代の寵児としてのカラヤンを大きくクローズアップする原動力となったのだ。

“カラヤンが好き”とは言いにくいほどの大人気

日本との関係も深く、1954年の単独来日以降、計11回の来日公演を行っている。その内訳は1959年のウィーン・フィル以外はすべてベルリン・フィルを率いての来日公演だ。当然ながらその人気は凄まじく、チケットを入手することが極めて困難だったことも記憶に残る。

その人気と知名度はクラシックファンのみならず一般の人々にも浸透し、その反動からか、コアなクラシックファンの間では「カラヤンが好き」と口にすることが軽薄に受け取られるようで憚られるといった奇妙な状況が引き起こされたことすらも懐かしい。

その状況は、1985年のショパン国際ピアノコンクール優勝者スタニスラフ・ブーニンがNHKのテレビ放映をきっかけに大人気となった「ブーニン現象」にも通じるところがあるように感じられる。確かにあの当時“ブーニンが好き”と言うのは何となく照れくさかったことを思いだす。

ファン心理ならぬオタク心理は実に複雑なのだ。そのカラヤンの、日本における足跡が明確に刻まれている場所が東京・赤坂アークヒルズに存在する。サントリーホール前に広がる広場は「アーク・カラヤン広場」と名付けられ、サントリーホールの設計にアドバイスを与えたカラヤンの功績をたたえる記念プレート(カラヤン財団より寄贈)が広場の壁に埋め込まれている。

カラヤンの名を冠した広場は、世界中でカラヤンの故国オーストリアの2カ所以外この赤坂アークヒルズにしか存在しないのだから価値は高い。

ではいったいカラヤンの何が凄いのだろう。その凄さを実感するために、2008年発行の「カラヤン読本」に示された数字を拾い出してみた。

録音においては、制作されたアルバム数なんと約900点。そしてその販売総数は1億枚を突破しているというのだから驚く。ちなみに1億枚のCDを積み上げると富士山79個分の高さになるのだとか。そしてその録音の内訳となる総曲目数は1189曲(再録音などを含む延べ数)。こちらは仮に1カ月に1曲録音したとして99年かかる計算だ。

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