スーパードライ帝国が再度原点を見つめ直した 過信を捨てたアサヒビール クリアアサヒ好調の舞台裏
流通サイドが感じ取ったアサヒの変化
発売まで2カ月となった08年1月末。「ミッションチャレンジ・クリアアサヒ」と題した10ページの黒いパンフレットが全社員に社外秘で配られた。社内向けパンフレットの作成は異例のこと。それだけ、クリアアサヒに懸ける意気込みは強く、それがいかに重要な製品であり、いかに優れているかを認識してもらおうという狙いがある。合わせて、全国で営業社員向け商品説明会を開き、徹底的に情報を刷り込んだ。発売1カ月前には、通常よりも早く広告をオープン。3月初めには店頭で展開できるだけの準備を整えた。
こうしたアサヒ側の変化を、流通側も肌で感じ取った。イトーヨーカ堂の渡辺氏は、「今までになかった長期的な販売計画があったので、流通側も取り組みやすかった」と話す。発売3カ月前の商談ピーク時には、08年度の販売計画が詳細に決められていた。新商品があふれる時代には、量で攻め、新商品としての鮮度を保つ必要がある。月替わりの販促キャンペーンと圧倒的な量のサンプリング缶を配布することで、まず商品を認知してもらい、味を知ってもらうことが最優先課題だ。9月末には、サンプリング缶の累計数が821万本に達した。言うまでもなく、過去最大規模のキャンペーンである。
渡辺氏はさらに、「営業からのオリジナル販促企画の提案数が増えた」と言う。たとえば、「地域限定で特殊なカートンを作りたい」「リアルタイムの販売本数を手書きPOPで置きたい」などなど。店頭では、消費者の目に留まる機会を増やすため、トップブランドのキリン「のどごし〈生〉」の隣に陳列してもらうことに徹底してこだわった。
さまざまな努力が実り、発売後から7月までの4カ月間、クリアアサヒの出荷は右肩上がりで推移する。通常、新商品は発売時が出荷ピークという業界の常識を打ち破った。9月末には950万箱を超え、1000万箱のヒット商品入りは時間の問題だ。最大の目標は、再来年にのどごし〈生〉を引っ繰り返すこと。スーパードライ依存からの脱却にも、ようやく希望の光が見えてきた。
(佐藤未来 撮影:代 友尋 =週刊東洋経済)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら