党においては、いずれ中央弁公庁(秘書室)、宣伝部(インターネットなどを担当)、組織部(人事の元締め)、統一戦線部(台湾工作を担当)、共青団(共産主義青年団。党の高級官僚の養成機関)が改革されるという。いずれも習氏が第1期の任期中に不満を漏らしていた機構である。
政の面では、国家機構の改革が決定された。金融関係では、「中国銀行、銀行業監督管理委員会、保険監督管理委員会、および証券監督管理委員会」の4者体制(一行三会体制)が再編成され、「中国銀行保険監督管理委員会」に統合されることとなった。国土資源省と国家海洋局、国家測量地理情報局を統合し、「自然資源省」も新設された。
また「退役軍人事務省」も新設。現在5700万人余の退役軍人がおり、その数は毎年数十万人増加し、その処遇は政府と軍の関係においても重要な課題となっている。さらに今回の決定には含まれていないものの、外交面でも、近日中に在外に派遣されている大使以下の人員を抜本的に入れ替えること、あるいは機構改革などが予定されているという。
特に注目すべきは「国家監察委員会」の新設だ。国務院にはもともと「監察部」があり、実際の取り締まりは、これまで政府や検察内に分散していた複数の部門が担当していた。それが今後、これら関係行政機関と、党の「規律検査委員会」の機能を統合することとしたのである。
習氏への権力集中で個人崇拝も
腐敗の取り締まりは、王岐山・前政治局常務委員が率いる「規律検査委員会」によって、すでに大きな成果があがっていた。習政権の1期目では、件数にして13.9万件、人数にして18.7万人の国家工作人員(国家公務員など)が有罪となった。年平均3.3万人以上の公務員が有罪となった計算だ。他の国でそれほど大規模な摘発が行われれば、国家自体がとうに崩壊しているだろう。
それでも、中国の腐敗は日本の常識では想像もつかないくらいひどく、これだけの摘発をしても問題は解消されず、むしろさらなる措置が必要だと考えられるようになったのだ。
中国ではびこっている腐敗は、単に件数が多いのではなく、中国社会の旧弊に根差している。その点では非効率な官僚主義とも同根の問題である。習氏は反腐敗運動を大々的に展開するとともに、大規模な機構改革を断行、さらに激しい人事異動を行うことによって、非効率な官僚主義や腐敗の根を断ち切ろうとしているのである。
だからこそ習氏は、独裁的な地位を狙っているという批判を受けつつも、広く支持を得ている。国民は習氏の改革姿勢を支持し、真に抜本的な改革を行うためには、習氏が必要だと考えているのだ。
ただし、一方では、そのように根が深い問題を、習氏といえども果たして変えられるか、という疑問が生じている。前述の『多維新聞』2018年3月8日付は、中国人はコネを使ってズルをしようとする悪弊があることを指摘しつつ、「習氏の強力な改革をもってしても、中国人のこのような習慣を変えることはできるか。現在のところ明確でない。5年後に根本的な変化が起きているかどうかわからない」と、根本的な疑問を投げかけている。
過去を振り返ってみれば、毛沢東も「文化大革命」において、官僚主義の非効率性、それに巣くう腐敗体質を徹底的に打ち破ろうとした。現在の中国では文革も毛沢東も”負の遺産”として否定されているが、習氏の大改造計画が目指していることは、結局、文革の理想に他ならない。そうであれば、習氏も結局、毛沢東の轍を踏むことになる危険は排除できない。かつて毛沢東の秘書を務め、今は最古参の長老で中国政治に隠然たる影響力を保持している李鋭氏は、習氏への権力集中が進めば、個人崇拝に陥る危険があると警告している。
習氏は、タスクフォースである「小組」でより柔軟に対処していこうとしているが、そもそも政治局は集団指導体制のためのメカニズムで、一種のタスクフォースとして機能することが期待されていたはず。政治局に代えて、小組の指導にしたとしても、再び非効率な官僚主義に陥らないですむ保証はない。
本当に徹底した改革をしようとすれば、文革のような混乱に陥る。しかし、適当なところで混乱を回避しようとすれば、失敗の繰り返しになる。習氏の大改革はそのような危険と隣り合わせなのではないか。
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