ゲームの決戦「eスポーツ」、若者が熱狂のワケ 本場韓国の専用施設で大会を観戦してみた

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ネクソンアリーナが作られたのは2013年12月だが、韓国でeスポーツが普及し始めたのはさらに前のこと。「2000年代の初頭から徐々に賞金制大会やプロゲーマーが出てくるようになった」(キム氏)という。

1990年代後半に韓国政府が実施したIT振興政策でインターネットが急速に普及したのに加え、1998年に米ゲームメーカーのブリザード・エンターテイメントが発売したPCオンラインゲーム『スタークラフト』が爆発的にヒット。キム氏は「ゲーム対戦文化が早くから根付いたことが、eスポーツ文化の発展に繋がっている」と話す。

対戦中のeスポーツ選手たち。会場からの歓声を背に、夢中でプレイを続ける(記者撮影)

ここで行われる試合は年間で約200試合。この日はPC向けレースゲーム『カートライダー』のリーグ戦が行われていた。満員に詰めかけた観客のうち、9割ほどは若い男性だが、女性やカップルの姿もちらほら見受けられた。試合中は、騒いで盛り上がるというよりは、食い入るようにスクリーンを見つめる観客が多かった。

妻と来たという20代男性は「10年以上前からカートライダーが大好きで、いつも観戦に来ている。妻はゲームをプレイしないけど、観戦には付き合ってくれるんだ」と話す。

「学校でもeスポーツの話題で持ちきり」

また、高校生2人組は「ネットでも観戦できるけれど、直接見るのが一番楽しい。僕たちゲーマーにとって、トップ選手はサムスン電子の会長と同じくらいの存在。学校でも野球やサッカーと同じくらい普通にeスポーツが話題になるよ」と話していた。

一方で、選手からはゲームを職業とする難しさも聞かれた。この日のレースで1位だったユ・ヨンヒョクさんは「リーグ・オブ・レジェンドのようなメジャータイトルでもなければ、トップ選手であってもゲームだけで生計を立てるのは難しい。今は大学生なので比較的自由にやれているけれど、これからカートライダー(のプレイ)で食べていくためにどうすればよいかを考えなければならない」と心境を打ち明ける。

ユ・ヨンヒョクさんは「今までは試合で勝つことだけに集中してきたが、今後は『カートライダー』という競技自体をメジャーにするべく努力したい」と話す(記者撮影)

eスポーツも通常のスポーツと同様、多くのファンを集める人気競技とならなければ、プロ競技として成立させることは難しい。eスポーツ文化が定着しつつある韓国であっても、プロ選手として活躍できるのは一部の有力タイトルにとどまるようだ。

日本でも今年2月にプロライセンス制度が導入されたほか、冒頭の企業がプロリーグやチームの運営への参入を相次いで発表。eスポーツのプロ化を進める動きが活発化してきている。人気化を目指すには、まず競技の魅力を国内で広く伝えていくことが不可欠となる。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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