インデックス投資の長期戦で損しないコツ 株価連動商品、暴落に動じる必要はない

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いいえ、約700000倍です。70倍ではなく、70万倍です(Jeremy J. Siegel “Stocks for the Long Run” FIFTH EDITIONより)。この200年間には、2度の世界大戦、史上最大規模の世界的大恐慌であるブラックマンデーなどが起こっています。日々、新聞やニュースで取沙汰されている諸問題とは比較にならない大嵐を乗り越えて、この結果です。株式という「仕組み」が持っている力を思い知らされます。

つまり人の未来を信じるということ

それでは、なぜ、世界各国の株式が右肩上がりに上昇してきたのでしょうか。それは、これらの国々を支える資本主義経済が拡大再生産し続ける仕組みだからだと考えられます。

おカネを持っている資本家が企業に投資する⇒労働者は労働力を企業に提供する⇒企業は市場で求められる製品やサービスを提供する⇒企業はそれを売って得た利潤から労働者に賃金を払い、残った利潤を資本家に配当する……という形で還元します。

資本家はさらに儲けるために資本を企業に投じ、労働者もさらに賃金をもらうために働いく。こうしてグルグル回っているうちに、資本が自己増殖していく。その過程で株価も上がっていく。こういう仕組みが資本主義経済です。

これが、人々の「豊かになりたい」という欲望に見事に合致しているものだから、資本主義経済は拡大再生産し続けているというわけです。

世界中の株や債券に国際分散投資するインデックス投資は、そんな資本主義経済の成長に投資することと同じです。バイ&ホールドでも儲かると考えられる理由はここにあるのです。

また、長期投資による「平均回帰性」も無視できません。

「平均回帰性」とは、短期的にはランダムに発生しているように見える事象であっても、長期的には平均値に収束していく性質のことです。統計学では「大数の法則」と呼ばれています。

簡単な例を出します。サイコロを振ると、1から6までの数字がランダムに出ます。ある目が出る発生確率は6分の1ですね。このサイコロを振る回数を10回、100回、1万回、10万回と増やしていくとどうなるでしょうか。10万回サイコロを振ったら、6が出る確率は1万6666回(100000÷6=16666.66666……)に近い回数になります。

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回数を増やせば増やすほど、6が出る回数はだんだんと理論的な発生確率である6分1に収束していきます。保険会社などは、この「平均回帰性」「大数の法則」を活用して、会社が損しないような保険料の条件で事業を行っているわけです。

世の中にはさまざまな現象や法則がありますが、世界最大のインデックスファンド運用会社である米国バンガード社は「投資の世界で最も一貫性のある現象が、平均回帰性である」と主張しています。

「資本主義経済の拡大再生産」のパワーというとらえどころのないものであっても、長期で投資し続ければ、平均回帰性の力が働いて、あるべき平均値(期待リターン)に収束していき、投資のプラスリターンとして取り出せるというわけです。

このように、積み立て投資のリターンを得るためには、相場の騰落に惑わされず、短期ではなく長期で、できるだけ長く市場にとどまり続けることがいかに大切さか、わかるかと思います。

水瀬 ケンイチ ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」著者

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みずせ けんいち / Kenichi Mizuse

1973年、東京都生まれ。都内IT企業会社員にして下町の個人投資家。2005年より投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」(http://randomwalker.blog19.fc2.com/)を執筆、現在はインデックス投資家のバイブル的ブログに。日本経済新聞やマネー誌などに数多く取り上げられる。著書に『全面改訂 ほったらかし投資術』(朝日新書、山崎元氏との共著)。

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