アマゾンが「協力金」要請、悩む取引先の本音 食品・日用品メーカーに「コスト負担」を要求

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今回の配送代行料の価格改定について、出品者からは冷静な声が聞こえてくる。ある出品者は「アマゾン側の負担も重くなっており、ある程度の値上げは覚悟していた」と述べる。別の出品者は「ヤマトとの交渉過程を踏まえると、今回の値上げ幅は思ったよりも少なかった」と話す。

販売価格への転嫁は難しい

出品者は、今回配送代行料金が引き上げられたからといって、すぐさま販売価格に転嫁することについては否定的だ。前出の出品者は「仮に値上げをしてしまえば、ショッピングカートボックス(カート)を取れなくなってしまう」と話す。

出品者はの商品ページの一等地であるショッピングカートボックスの獲得を狙う(写真:アマゾンのサイトより)

「カートを取る」とは、商品ページにおいて一番目立つ掲載枠を獲得することを指す。アマゾンのサイトでは複数のショップが同一商品を販売するケースがあるが、その商品は1つのページにまとめられる。その場合、目立つ形で表示されるのは1店舗のみで、それ以外の店舗のほとんどは露出されない。各出品者は売り上げの最大化を目指して、カート取りを狙う。

カートを取れるかどうかは注文不良率や出品者のパフォーマンスなど、さまざまな要因で決まるが詳細な基準は公表されていない。前出の出品者は「価格だけですべて決まるわけではない」と前置きしながらも「価格はかなり考慮されている印象。仮に値上げをすればカートから落ちる可能性もあり、そうなれば売り上げへの影響は大きい」と指摘する。

アマゾン側にとってはさまざまなコストが上昇する中、同社の集客・サポート力を享受する取引先メーカーや出品者に一定の負担を要請するのは自然な流れかもしれない。ただ、ある出品者は「あまり過度な要求をして、取引先が離反する事態になればアマゾンにとってマイナスになる」と牽制する。足元の負担と、取引先との関係性のはざまでアマゾンは難しい舵取りを迫られている。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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