過半数確保に向け、メイ氏の保守党が手を組んだのが北アイルランドのプロテスタント系民主統一党(DUP)だった。過激な反カトリック主義の伝統を持つ政党である。そんなDUPと連立を組む英国政府に、公平な仲裁役を務めることなど不可能だろう。
目下行われている英国のEU離脱交渉によって、事態はさらに複雑化している。英国のEU離脱に伴い、北アイルランドとアイルランド共和国は英国とEUの国境によって分断される。だが、このような帰結にどう対処すればいいのか、誰も答えを持ち合わせていないようだ。
「ハードボーダー」を出現させるか
英国には「摩擦なき国境」を求める議員も存在するが、メイ氏と政権内の強硬派はEU単一市場と関税同盟の双方からの離脱を議論し、北アイルランドは英国のほかの地域と同じ通商ルールに従うことになると主張している。
アイルランド島を含むブリテン諸島全体で機能する摩擦なき通商管理体制を作るのか、アイルランド島に「ハードボーダー」(厳格な国境管理)を出現させるのかの、どちらかになるということだ。
ITを駆使して国境管理の摩擦を減らす案も浮上しているが、もちろんこれはテクノロジーによって簡単に解決できるような問題ではない。税関や出入国管理に何らかの物理的チェックが伴うことは避けられない。
国境管理に当たる税関職員は分断の象徴と見なされ、カトリック過激派から攻撃対象にされることすら予想される。まさに過去に起きたことだ。一度でも衝突が起きれば、英国政府は国境警備を強化する必要に迫られ、分断は深まり、暴力が新たな暴力に発展する事態となりかねない。
ハードボーダーが再び出現すれば、その結末は壊滅的なものとなろう。苦労して勝ち取ったアイルランドの平和と繁栄が脅かされないことを願うばかりである。
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