(第5回)再生医療への取り組み(その3)

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 この恩恵に多大な感謝の念をもつ私にとっては、現在の再生医療が、ゼブラフィッシュの研究領域とは対照的に個々のグループが個々の知財を中心に各々独立して動いている印象がぬぐえない。さらに、知財の議論もあいまって個々の発見に対する多くのバイオ系ベンチャーが設立されたが、これらは本当に自力で臨床応用まで行き着けるのであろうか。標準化にも関連するが、再生医療の底上げ、眠っているシーズの発掘、個々の小さな研究グループでは実現できないことをチームワークで実現し、参画したくても参画できずにいる研究者の発掘につなげるには、目先の個々の利益の確保に翻弄されず、発見や施設を共有できる環境と考え方の整備が必須であろう。このような要請の中、文部科学省の再生医療の実現化プロジェクト(http://www.stemcellproject.mext.go.jp)が2期目にはいり、iPS細胞を中心とした幹細胞の再生医療への利用を中心に展開している。

iPS細胞:京都大学の山中伸弥教授のグループにより樹立された、一部の例外を除き、理論上どんな細胞にもなることができる細胞。
=induced pluripotent stem cells、人工多能性幹細胞
 第1期では、臍帯血などを提供する幹細胞バンクが徐々に整備され、東大医科研内では扱いの難しい高額な機器を要するセルソーティングについて極めて高い技術サービスを非常に廉価で提供する施設が稼働しはじめた。第2期ではiPS細胞の技術にかかわる実験プロトコールの公開や技術移転のための講習会などが積極的にはじまっている。このプロジェクトは時限のものであるが省庁の垣根をこえた知識と材料の恒久的な拠点の形成が望まれる。
図5-2:ゼブラフィッシュの顕微鏡写真
 ゼブラフィッシュは、顕微鏡下で卵にDNA、RNA、薬などを簡単に細いガラス針をもちいて導入することができる。写真は受精後3-5日程度のゼブラフィッシュの稚魚であるが、全身の血管の造影、遺伝子の発現状態の検討、さらには特定の組織を光る蛋白質で可視化すること(右側の一番下の図。左側は眼の水晶体が、右側は眼の網膜が光っており、体が透明なので右の図は向こう側の眼が透けて見えている。)などを容易に行うことができる。骨の染色なども極めて容易なので、特定の遺伝子や薬剤の影響を観察する際に様々な観点からの影響を迅速にしかも低コストでおこなうことができる点が大きな魅力となる。写真はすべて渡辺研究室で撮影。
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