フロリダ高校「乱射事件」、水面下で進む審議 「隠し銃携帯許可法」が審議されている
「60ミニッツ」ではニューヨーク市警察委員がインタビューに応え、隠し銃携行の危険性を声高に訴えていた。年間5000万人超の観光客が押し寄せるニューヨークで、何百、何千丁という銃が連日市内に持ち込まれることになれば大混乱を招くに違いない。
銃の数が増えれば、犯罪が増加するだけではなく、自殺件数も多くなる。銃による事故も後を絶たない。実際、子供が親の銃を手に取って遊んでいるうちに暴発するというケースも多いからだ。
そのうえ、いままで警官は誰が銃を携行しているか、おおよその見当がついたものだが、それが全くわからなくなると警察委員は頭を抱えた。
大都市のロサンゼルス、シカゴ、首都ワシントンでも警察は同様の危機感に包まれている。ウィスコンシン州ミルウォーキー市では「隠し銃携行許可」が始まってからの6年はまさに災難の連続だと、ミルウォーキーの警察署長もこぼした。
「毎年、撃ち合いが増え、銃による自殺がうなぎのぼり、街角で警官が没収する不法銃の件数も増加の一途です」
オバマ時代の「銃規制」を破棄
「隠し銃携行許可法案」の議会通過については、ドナルド・トランプと全米ライフル協会が強力に後押ししていることは言うまでもない。さらに、共和党支持州やガン・ロビー、各種銃愛好家グループなどが頑迷に支持する。彼らは、銃の所持は憲法修正第2条によって保障されているといって一歩も引こうとしない。
「規律ある民兵は自由な国家の安全保障にとって必要であるから、国民が武器を保持する権利は侵してはならない」
という第2条を盾に取っているのだが、一般市民が装てんした武器をどこでも持ち歩く権利を保障するなどとは、決して言っていないではないか。
「隠し銃携行許可は、運転免許証のようなものです。ここでは銃を持って運転できないとか、ここは大丈夫とか、区分けするのは難しいでしょう」
こう主張するのは、この法案を議会に提出しているノース・カロライナ州下院議員のリチャード・ハドソンだ。
運転免許証と隠し銃携行許可を一緒にされたらたまらない。一体、どういう神経をしているのか。
ドナルド・トランプはフロリダ州の高校で起きた乱射事件の5日後、銃器購入に関する身元確認の連邦システム改善に向けた取り組みを支持すると発表した。家庭内暴力などを含む過去の犯罪歴が即座にチェックできるようになれば、銃購入者を限定することができるようになるかもしれない。さらに、バンプストックという銃の連射性能を上げる改造部品の販売を禁止すると言った。
大統領がどれだけ熱意を持ってこの法案を支持していくかおよそ不明だが、それより気になるのは、ホワイトハウス入りした直後、議会の審議を経てバラク・オバマ大統領時代の銃規制の1つを破棄していることだ。
それは、精神障害のある患者が銃を買える権利を否定するものだった。さすがにトランプもこれには大きな顔ができないと思ったのだろうか、密やかに署名し、それから知らん顔している。そうでなかったら、一体、どんな面を下げて、「精神疾患という問題に取り組まなければならない」などとフロリダ乱射事件の後ですまし顔ができるのだろう。