フロリダ高校「乱射事件」、水面下で進む審議

「隠し銃携帯許可法」が審議されている

ドナルド・トランプが精神障害のある患者も銃の購入ができるよう、オバマ時代の法案を破棄したことは、フロリダの事件やテキサスの教会で起こった事件、さらに約400メートル離れたホテル上階から、コンサート会場を狙い撃ちしたラスベガスの事件に影響していることは間違いない。

そして、彼が目立たないようそっとこの法案破棄に署名したのは、全米ライフル協会から3000万ドルもの選挙資金をもらったからである。

この国は危険な方向へ向かって地殻変動しているとしか思えない。精神障害のある患者がオートマティック・ライフルなどを購入できることだけでもぞっとするが、この先、上院で「隠し銃携行許可法案」が通過したら、実弾入りのピストルを身につけた人々が横行し、街角の乱射事件など珍しくもなくなるだろう。

わたしが初めて訪ねた70年代のニューヨークは、ドラッグと犯罪に溢れる危険な街だった。タイムズスクエアにはXXXというマークのついたセックスショップやポルノショップが建ち並び、タバコ売りのブースは強盗を防ぐ鉄条網に覆われていた。1984年に移り住むようになった時も、夜1人で女性が街を歩くことは危ぶまれるほどだった。

それが現在ではタイムズスクエアもまるでディズニーランドのように明るくきらびやかで安全になった。昔の危険なニューヨークが懐かしくなるほどだが、携行銃の横行はこの街を全く違った方向へ持っていくだろう。明るくきらびやかだが、実は、いつ実弾が飛んでくるかわからない危険なニューヨークである。

女性たちの根深い怒り

このフロリダ乱射事件は一方で、スキャンダルに溢れかえるホワイトハウスから、市民の目を転じさせる効果があった。元妻2人の虐待疑惑を受けてロブ・ポーター秘書官が辞任した後、経歴調査がクリアではなかったポーターが、機密文書にアクセスできる仕事に就いていたことが発覚し、ジョン・ケリー大統領首席補佐官の責任が問われるようになった。

さらに大統領の顧問弁護士が、アダルトビデオ女優のストーミー・ダニエルズ(実名はステファニー・クリフォード)にトランプとの情事を公言しないことを約束させるために13万ドル支払っていたことが発覚。さらに、雑誌『プレイボーイ』のプレイメイトとの情事についてタブロイド版新聞が報道しないよう、15万ドルが支払われていたことも明らかになった。両方ともメラニア夫人が妊娠・出産直後の2006~2007年頃のことで、支払いは選挙戦中の2016年に行われたという。

大統領をセクハラで訴える女性の数は十数名を数える。ストーミー・ダニエルズやプレイメイトが実名で登場してくるのも「#MeToo」の影響に違いない。もともと#MeTooが始まったのは、ドナルド・トランプのあからさまな女性蔑視に端を発するものだった。女性をセックスの道具としか思わず、どんな女性も好きにやり込めることができると公言する大統領への根深い怒りである。

#MeTooはまた、火器携行で強さを誇りたいとする男性原理への大いなる挑戦であり、危険な方向に進まんとする地殻変動は、女性たちの怒りでしか対抗できないと思えるのだ。

同様に、フロリダの地元高校生たちが抱く激しい怒りは、女性たちの根深い怒りにまで昇華することができるだろうか。そうなって欲しいと心から思う。

(文:ジャーナリスト 青木冨貴子)

Foresightの関連記事
北朝鮮「平昌平和攻勢」の舞台裏(2)妹「金与正」派遣の狙い
北朝鮮「平昌平和攻勢」の舞台裏(5)鍵は「スウェーデン」と「韓成烈」という男
福島と京都の間で:古里の意味を問う「自主避難者」の旅(上)
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナ後を生き抜く
  • コロナショックの大波紋
  • コロナショック、企業の針路
  • ボクらは「貧困強制社会」を生きている
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
コロナ徹底検証<br>日本は第2波に耐えられるか

米国やブラジルでは新型コロナウイルスの感染拡大が続いていますが、日本は感染者も死者も圧倒的に少ない。その理由はいったいどこにあるのでしょうか。政策面、医療面から「第1波」との戦いを検証。「第2波」への適切な備え方を考えます。