記者クラブ制度が映すジャーナリズムの難題 検証不足、横一線を続ける先に何があるのか

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米国のホワイトハウスにも、日本の記者クラブと似たような仕組みはある。ただ、米国の場合は記者会見で発表されたニュースや数字などに対しては、必ず記者個人や報道機関としての「検証」が入る。

とりわけトランプ政権のように、就任式に集まった人の数を平気で大幅割り増しするような報道官に対しては、厳しい質問を浴びせかける。記者クラブとはいっても、そこは政府とプレスとの「バトル(戦闘)」の場になっている。

実際、日本の記者クラブ制度が、日本国民の「知る権利」を阻害する存在になっているのではないか、という指摘が後を絶たない。

海外では通信社が情報を集める

海外では、速報性の高いニュースなどは、ロイターやAP(ともに米国)、AFP(フランス)といった通信社が集めて来て、その情報をベースにして新聞社は誌面を作り、テレビ局はテレビ番組を作る。

米国では、通信社の記者と新聞記者とでは、その役割やスキルが大きく異なっており、日本で新聞記者が記者クラブで集めて来るような情報の大半は、海外では通信社が新聞社やテレビ局に提供していると考えていい。

米国の新聞記者は何をするかといえば、通信社がかき集めた情報の裏を取り、異なる意見を収集し、事実を分析、検証するという役割を担っている。ニューヨーク・タイムズのように、毎日100ページを超える誌面を供給しているのも、そうしたシステムができているからだ。

ところが、日本の場合は通信社と新聞社、テレビといった垣根がほとんどなく、ニュースの現場にはどっと押しかけていく。災害現場にヘリコプターが10機以上も飛び交って、よく批判を浴びるが、通信社が数社飛べば済むことを大手報道機関が全社でやっている。それが日本のシステムというわけだ。

日本では、新聞にせよ、テレビにせよ、同じ内容の記事がやたらに多い。発言する関係者の顔ぶれも一緒ならコメント内容も同じ。一時期テレビ東京が、他社と違う番組構成をかたくなに守る姿勢が高い評価を受けたが、問題なのは「大手メディアはなぜ他社と同じでなければならないのか」ということだ。

最低限ライバルと同じ横並びでなければいけない――という発想は日本特有のものなのかもしれないが、海外のメディアでは逆に恥ずべきことであり、許されないことといってよい。

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