記者クラブ制度が映すジャーナリズムの難題 検証不足、横一線を続ける先に何があるのか
記者クラブを通じて世の中に伝わる情報は多い
記者クラブ。政府や自治体、業界団体などを継続的・網羅的に取材活動するために新聞社や通信社、テレビ局などの大手メディアに属する記者が中心となって構成される組織だ。誰もが情報を発信できるインターネット時代になっても、ニュースリリースや共同会見など、記者クラブを通じて世の中に伝わる情報はいまだ多い。
新聞にせよ、テレビにせよ、記者クラブからの配信記事だということは、一般の読者や視聴者にはわかりにくいかもしれない。菅義偉官房長官が1日に2回やっている記者会見なども、普通の人は政府が開いていると思うかもしれないが、実は「首相官邸記者クラブ」が開催している。
かつて、財務省出身の元官僚が「官僚にとって記者クラブほど便利な存在はない。ペーパーひとつで自由に操作でき、国民の世論操作だって簡単にできる」という趣旨の発言をしていたことがある。
たとえば、ある分野で大幅な規制緩和を推進したいと思ったら、その担当省庁は新聞記事やテレビのニュース番組で取り扱いやすい体裁に情報を集めて構成し、「文書(ペーパー)」を作成。記者クラブ主催の定例記者会見で配布する。
翌日の新聞には、似通った内容の新聞記事が掲載され、テレビはニュースとして放映する。通信社も地方新聞や地方のローカル局などに同じ内容のニュースを配信する。国民は、一夜にして規制緩和の動きを認識し、その主旨を知ることになる。
国会が解散するときも、どこからともなく解散間近といったスクープがあって、世論の反応を探るのがいつものパターンだ。国民が認めるようなら解散に踏み切る。世論が大きく反対するようなら見送り、という具合になる。
しかも、こうした一連のニュースや記事は記者クラブから出たものなのか、それともまったく異なるところから出たものなのかがはっきりしない。
こうした手法が日常的に行われているのが日本の報道機関だ。残念なことに、日本の記者クラブでは加盟各社が政府や自治体、業界団体などから提供された情報を報道する際にその検証が不足していると感じることが多い。とりわけ、選挙や世論の誘導に使われているのではと感じている人も少なくないはずだ。
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