交通事故鑑定人が「声なき声」からたどる真実 「息子がバイク事故で死んだ理由を知りたい」
警察によれば、
「原付バイクが急な右折をしたために、対向車線から直進してきたタクシーは避けることができなかった。事故は原付バイクの過失運転」というのだ。
「命を落とした次男が悪者で、命を奪ったタクシーの運転手は無罪放免?!」
理不尽な判断に史子さんは、煮えたぎるような怒りと悲しみにさいなまれた。
なぜなら、どう考えても解せない疑問があったからだ。
「あの交差点で息子は決して右折しないのに、なぜ右折をしたと言われるの?」
現場の交差点は交通量が多く、バイクの運転に慎重だった次男は、普段そこで右折をすることはなかった。
「息子は本当に右折行動に出たのだろうか?」「右折せざるを得ない事態に遭遇したのではないのか?」
事故の真相は不透明なまま
警察がまとめた実況見分調書は、驚くべき内容だった。
記載されている3人の目撃証言はことごとく食い違い、事故の真相は不透明なままなのだ。
「こんな曖昧な書類で、息子の死が片づけられたなんて!」
失語症のハンデを抱えながら必死に警察に事故の疑問を訴える史子さん。
「事故はなぜ起きた? 息子はなぜ右折しようとした?」
日に日に膨らむ疑問……史子さんと長男は解決方法を必死に探した。そして、交通事故鑑定人という存在を知る。「事故を調べ直してもらえる!」藁にもすがる思いだった。
依頼を受けた交通事故鑑定人・熊谷宗徳は千葉県警に24年間勤務、交通捜査官として2000件以上の交通事故捜査に携わってきた。
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