交通事故鑑定人が「声なき声」からたどる真実 「息子がバイク事故で死んだ理由を知りたい」
その日の夕方、3人は久しぶりに外食を楽しもうと、自宅から少し離れた回転すし店へ向かった。
自転車で行こうとする史子さんと長男に、高校2年生の次男が手を合わせて懇願した。
「おかん、バイクで行ってもええ?」
母を心配させないようバイクに乗る時は必ず許可を仰ぐのが習慣だった。
この日、史子さんは、バイクに乗りたくてたまらないといった表情の次男に思わず、
「ええよ」
と言ったのだった。
交差点の中央には人が倒れていた
食後、店を出ると、小雨が降り始めていた。
次男は、史子さんと長男に笑顔で手を振ると、一足先に家へと向かった。その後、母と長男が自転車で走っていくと、交差点周辺に人だかりがしている。交差点の中央には人が倒れていた。
「バイクがタクシーに衝突したらしい……」
そんな声が聞こえた瞬間、史子さんの目に見覚えのあるスニーカーが飛び込んできた。
「まさか?!」
史子さんと長男が駆け寄ると、それは紛れもない次男の変わり果てた姿だった。口から血を流してピクリとも動かない。
史子さんは必死に次男の名前を叫び続けた。次男は意識を回復しないまま5日後に死亡。
「私がバイクの運転を許さなかったら、あの子は死なずにすんだ……」
自分を責め続けた史子さんは、葬儀が終わった直後から話せなくなった。失声症だった。
【2018年4月2日追記】記事初出時、「失語症」とありましたが誤りでしたので上記のように修正しました。
そんな史子さんに思いもよらぬ苦悩が待ち受けていた。次男のバイクと衝突したタクシー運転手が不起訴になったのである。
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