ネット広告が売れない!電通の思わぬ受難 持ち帰り残業にセクハラ...課題も山積みだ
発端は2017年1月、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の最高ブランド責任者、マーク・プリチャード氏が、ネット広告の業界団体「IAB」のコンファレンスで行ったスピーチにある。数値や効果の不明確さなど、ネット広告の問題点を指摘したスピーチは、欧米を中心に業界の大きな話題となった。
それ以降、「ブランドセーフティ」(ブランド価値を毀損するようなサイトに広告を表示しないようにすること)の問題、「アドフラウド」(人ではなくプログラムが閲覧するなどの広告詐欺・不正)など、ネット広告の負の側面が大きくフォーカスされた。
その結果、P&Gと同様にデジタル広告への出稿を見送るグローバル企業が相次いだ。この影響を受け、電通は海外で思うように成長できず、厳しい決算を強いられたのだ。
続く2018年はどうか。電通は全体の収益を8.4%増、売上総利益を8.8%増、営業利益を17.8%減とする2期連続の営業減益を計画する。
海外は新規案件テコに着実成長へ
海外事業の売上総利益は14%増の5881億円。調整後営業利益は3.1%増の775億円。2017年にベルギーのビール世界大手アンハイザー・ブッシュ・インベブや、アメリカン・エキスプレスなどから約52億ドル(約5600億円)の新規案件を獲得したことで、着実な成長を見込む。M&Aも引き続き500億~600億円程度の予算で実行する考えだ。
一方、海外事業の社員数が4万人規模に達したことから、各社の業務の標準化やコーポレート機能の統合などに費用を投じる。新規ビジネス関連の費用も盛り込んでいる。成長速度は鈍化するが、山本敏博社長は「(先行費用は)2019年以降の成長につながる」と説明する。
アンドレー取締役も「2018年の成長は競合他社を上回る最高水準に復帰するだろう。(市況は)2017年第2四半期(4~6月期)に底を打ち、以降は堅調に回復している。広告主にも再び積極的に出稿する姿勢が見られる」と自信を示す。「M&Aを除く成長率は年間3~5%がターゲットになる」と説明。その上で、「インフラを整備することで、2019、2020年は大きな成長ができる」と、2018年を飛躍に向けたステップとも位置づける。
ただし、2017年のように、ネット広告に対する広告主の不信感をぬぐえなければ成長シナリオは危うい。電通グループの努力で解決できる問題ではないだけに、先行きは不透明だ。
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