日本電産永守氏「初の社長交代」を決めた事情

名物社長がバトン渡した"プロ経営者"とは

入社からわずか2カ月で、吉本氏は傘下で自動車の変速機用コントロールバルブなどを手掛ける日本電産トーソクで社長に就く。営業利益率10%以下は”赤字”と見なされる日本電産グループの中で、約1年というスピードで日本電産トーソクを”黒字化”させ、その手腕が認められた。

「自分がその年齢のときに何をしていたか」。現在73歳の永守氏が後継者を考える際に重視していたことだ。たとえば日本電産が上場した1988年、永守氏は41歳。当時の売上高は300億円だった。しかし吉本氏は40代で、2010年から当時売上高6200億円のカルソニックカンセイの専務を務めていた。1兆円企業となった日本電産の船頭を任せるには、大企業の経営経験が必須要件だったのだ。

そんな吉本氏が自らの経験を基にあぶり出したのが、日本電産の抱える2つの課題だった。

吉本次期社長が率いる車載事業を成長させるべく、日本電産は仏自動車大手グループPSAと車載モーターの合弁会社設立を発表。2017年12月の記者会見では"永守節"が炸裂した(撮影:風間仁一郎)

1つは、大企業病だ。「オペレーションの海外シフトの進展に伴って、スピード感にばらつきがある」と吉本氏は指摘する。規模を追い求めると同時に、中小企業のような俊敏さを持つ必要があると見ている。

もう1つが、海外との対話である。日本電産の場合、2000年以降に海外企業の買収が一気に増えた。直近では仏自動車大手グループPSA(プジョーシトロエン)と車載モーターの合弁会社設立を発表している。「現場に入り込み、グローバルなコミュニケーションを丁寧にとっていきたい」と英語が堪能な吉本氏は意気込む。

2030年10兆円達成までは「辞めない」

永守氏と吉本氏の2人がその先に見据えるのが、「2030年売上高10兆円」の目標だ。記者会見で永守氏が強調したのが、「自分が辞めるわけではなく、会長兼CEOとして引き続き2030年の10兆円達成まで経営の舵を取る」ということ。ただますますグローバル企業になるグループの経営は分担が必要だ。「(吉本氏には)海外関係、特に買収企業のPMI(買収後の融合)を中心に任せたい」という永守氏は、「将来的にはCEOの引き継ぎも考えている。後継者を自分以上に育てるのが最大の責務」とも話した。

今後吉本氏は、シャープで会長職を務めた片山幹雄副会長兼CTOなど、年長の経営陣にそれぞれの得意分野を任せ、集団指導体制で率いることになる。創業者の剛腕で業績拡大を続けてきた日本電産にとって、スピード感と集団指導体制を両立させるのは、経験したことのないシステムであり時に相反する。

日本電産で重視されるのは、何よりも実績だ。先述の通り、それこそが吉本氏の抜擢理由であり、永守氏の期待も大きいだろう。その期待に沿えない場合、体制が変わる可能性もある。それだけ、「永守会長の後継」という責任は重い。

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