トランプ大統領は、なぜ脱北者を讃えたのか アジア人差別が根強い米メディアを意識?

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一般教書演説が行われたワシントンの議会で、松葉づえを掲げ聴衆に応える脱北者のチ・ソンホ氏(写真:January 30, 2018. REUTERS/Jonathan Ernst/File photo)

トランプ演説によると、チ・ソンホ氏は北朝鮮に住んでいた少年時代、飢餓に苦しみ、食料と交換する石炭を盗もうとしたが、空腹のため線路上で気を失い、列車にひかれて左足を失った。その後、自由を求めて脱北を決意し、松葉づえをついて中国、東南アジアを歩き回った。現在、韓国のソウルに住み、脱北者の支援にあたる一方、北朝鮮政権が最も恐れている「真実」を北朝鮮向けに放送しているという。

そのようにソンホ氏を紹介したトランプ大統領は、「ソンホさん、あなたがたどってきた長い道のりを忘れないように、いまでもその古い松葉づえを持っていますね。その大きな犠牲は私たちすべてに感銘を与えるものです。その体験は、すべての人の魂が自由の中で暮らしたいと願っていることの証しです」とたたえた。

すると、議場は総立ちとなり、拍手が湧き起こった。トランプ大統領に促されて立ち上がったソンホ氏は、その古い松葉づえを高々と掲げて、満場の拍手に応えた。その様子はテレビにも大きく映し出された。

日系人に対する人種差別的偏見がない

その場面を見ながら、筆者は同じアジア系の人間としての感慨を抱かずにはいられなかった。それは、アジア系の人々に対する人種差別的偏見が、トランプ大統領にはないのだな、という感慨だ。

筆者自身、これまでにさまざまな人種差別的偏見に遭遇してきた。その屈辱を自らの努力もさることながら、エリオット・リチャードソン氏(保健教育福祉長官、国防長官、司法長官、商務長官と米国史上初めて4つの閣僚ポストを歴任)のような、高潔にして見識の高い人たちの知遇・支持を得ることで克服することができた。

そうした体験から、今回のソンホ氏に対するトランプ大統領の厚遇ぶりを目の当たりにすると、まさに人種差別的偏見がみじんもないと受け止めることができる。

実は、そのことを米メディアのほとんどが気づいていない。

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