表参道に群がった巨額資金、都心不動産バブル”宴の後”
ラブホテルに過大投資 致命傷となったセボン
都心ミニバブルに踊った新興不動産会社の中には意外な方面に戦線を広げたところもある。非上場ながら急成長を見せていたセボン(東京都新宿区)がそれだ。06年にはジャスダック上場の注文住宅請負会社、旭ホームズを傘下に収めた。六本木5丁目の再開発がらみで一儲けするなど、07年5月期には営業収益が800億円を突破、金利負担後の経常利益も107億円に上った。
その急成長企業は05年6月、「バニラ」という子会社をひそかに設立。中古ラブホテルを買い取り、リニューアル工事を施して転売するのが目的だ。過去に本体で同様の商売を行い、相当な利益を上げた経験から専門会社を立ち上げたのである。東京・東村山の旧「アポロ」を手始めに、全国で買いあさった物件は23カ所。ホテル用地5カ所も取得した。
資金の過半は借り入れだが、ラブホテルだけに銀行は融資を渋る。借入先は通販大手ベルーナの子会社サンステージや、商工ローン大手のSFCGなどノンバンクばかり。その分、金利は高めだ。転売が進めばそれでもよかったが、思惑どおりにはいかなかった。つなぎ営業による日銭は利払いに消え、抱え込んだ棚卸資産150億円が重荷となった。
セボン本体も75億円の資金支援を行ったが、不動産不況の深刻化で金融機関の態度が硬化する中、支えきれなくなった。両社は8月25日、民事再生法の適用を申請。負債額は単純合計で847億円に上った。その頃にはすでに、反社会的勢力との関係が問題視されたスルガが6月24日に倒れ、仏BNPパリバと転換社債の裏契約を結ばざるをえないほど追い詰められていたアーバンも8月13日に行き詰まっていた。
明治建物は昨年10月、仕手銘柄として知られるNFKホールディングスの2割の株式を突如取得して市場デビューを果たしたが、間もなく経営難に陥った。共同事業契約でNFKから引き出した9億円は償還延期となり、表参道で保有し続けた一部物件は今年3月下旬以降、次々と仮差押登記がなされ、7月末にはアトリウムに代物弁済で没収された。
プレーヤーが次々と経営破綻する中、残された不動産はどうなるのか。表参道のつめ跡のうち冒頭の空き地など5カ所は東京・虎ノ門のビルの1室に登記された複数の合同会社に昨年11月までに次々と転売された。代表社員に就任しているのは「Jingu�」などと命名されたシンガポール法人。それらの資金源は米メリルリンチのケイマン法人から資本拠出された19億ドルだ。外資の中でサブプライム問題後、真っ先に日本での不動産融資を絞ったのはメリルともされる。一部を除き物件が再開発される気配は今のところない。
(週刊東洋経済編集部)
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