表参道に群がった巨額資金、都心不動産バブル”宴の後”

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詐欺未遂、違法な交渉 バブル背後の深い闇

かつての平成バブルと同様に今回のミニバブルでも、不動産取引をめぐって怪しげな人脈がうごめいていた。表参道地区の地上げでは昨年9月、政界にパイプを持つフリーライターや元参院議員秘書らが、詐欺未遂などの容疑で東京地検特捜部に逮捕される事件が表面化している。

今年3月に弁護士法違反に問われたスルガコーポレーションの業務委託先による違法な立ち退き交渉も、舞台の一つは表参道だった。同社は03年7月以降、計7物件で不動産業者「光誉実業」(大阪市東住吉区)を立ち退き交渉に使った。同社は山口組系暴力団と親しいとされる。事件初公判の検察側冒頭陳述によると、経営者は過去に脅迫など10件もの前科前歴のある人物。一緒に起訴された専務以下3人の幹部も複数の前科前歴があった。

スルガは短期間で業務を完了させる光誉を高く評価。光誉の経営者は「スルガの仕事や。迷惑かけたらあかん」と部下に指示して強引な交渉を行った。スルガは07年2月に「表参道三屋マンション」を、アデランス創業者が関係する投資委託会社などを通じて購入。光誉に業務を委託、約8億円を支払った。同年7月に銀行から「問題企業」との指摘を受け一応は取引を打ち切ったが、立ち退き交渉は光誉の紹介先2社に引き継がれ、約13億円が支払われた。同ビルには事件摘発まで光誉関係者の店舗が入居していたとの事実もある。

表参道の不動産売買をめぐるキナ臭い話はまだある。目抜き通りに面した超一等地の「第21SYビル」など計3棟を、アーバンコーポレイション系のSPC「人形町エステート」が購入したのは今年2月15日。当初500億円を予定していた転換社債による資金調達が270億円にとどまるなど、アーバンの経営不安がささやかれだした時期の取引だ。

私募ファンドを使った不動産流動化ビジネスはアーバンが最も得意とするものだった。バブル絶頂時、物件取得額に対して金融機関からのノンリコースローン(非遡及型融資)は「案件によって必要額の8~9割出た」(不動産ファンド運営会社役員)ともされる。残りは資本金や特定投資家からの匿名出資で調達。アーバン自らは出資を5%以下に抑え、SPCを非連結化していた。物件の転売益は、数%程度の金利や、それより多少高い匿名出資配当を差し引けば、残りを企画料などの名目で一手に吸い上げられるという算段だ。

いわば高レバレッジ(借り入れによるテコ)と非連結化が高収益を演出するマジック。だが、官報公告された人形町エステートの08年5月期貸借対照表を見ると、その手法も修正を迫られていたようだ。総資産229億円に対して、負債は半分以下の90億円。株主資本の多くもアーバン負担と思われる。同3月期の有価証券報告書によると、アーバンの人形町エステート株保有額は61億円に上る。この頃になると、アーバン組成の私募ファンドにカネの出し手がつきにくくなっていたのだ。

キナ臭いというのはこういうことだ。すでに厳しい状況にあったアーバンは、この物件を元の所有会社から「ネオ・ウエーブ」という会社を通じて買った。3者間の売買は同日だ。宅地建物取引業法により仲介手数料は売買価格の約3%が上限。実質的には仲介なのに売買の形式をとるのは、中間業者が高い利ザヤを抜くために行われることが多い。実はネオ・ウエーブの約7割の株式を握るオーナーはコンサルタント業を営むいわく付きの人物。今年5月下旬、食品会社譲渡にかかわる仲介料を隠していたとして所得税法違反で東京国税局により告発されているのだ。

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