財政赤字解消を放棄したトランプ政権の意図 ついに瓶の中から「魔人」が飛び出した

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近年の共和党は、その実現可能性はどうであれ、財政赤字の解消を掲げてきた。減税や対テロ戦争で財政赤字を膨らませたジョージ・W・ブッシュ大統領も、第2期が終わりに近づいた2008年度の予算教書からは、2012年度までに財政赤字を解消する目標を掲げていた。

その伝統が、ぷっつりと途絶えた。それも、景気後退や戦争など、やむをえない事情があったわけではない。景気は拡大を続け、対テロ戦費も一時ほどの規模ではなくなった。それにもかかわらず、トランプ政権の予算教書では、2020年度にかけて財政赤字の拡大が容認されている。昨年末に実現した大型減税に加え、国防予算の増額やインフラ投資の推進等が提案された結果である。

実は議会においても、財政規律の緩みを象徴する出来事があった。

最も馬鹿げた政府閉鎖

予算教書の発表に先立つ2月9日、米国は今年2度目の政府閉鎖を経験した。暫定予算の延長が間に合わなかったからだが、ほとんどの国民は気づかなかったかもしれない。真夜中に暫定予算が失効したが、ほどなく議会は次の暫定予算を可決し、朝の5時半にはトランプ大統領の署名によって成立したからだ。あまりにあっけない結末に、議会関係者のあいだでは、「最も馬鹿げた政府閉鎖」と呼ばれる始末である。

しかし、政府閉鎖の終了につながった財政合意の内容は、極めて重い意味をもつ。「小さな政府」を目指すはずの共和党が多数党を占める議会で、驚くほど明快に財政規律の緩みが容認されたからだ。

今回の財政合意では、毎年度の予算で決められる一般経費(裁量的経費)の歳出上限が、向こう2年間にわたって大幅に引き上げられた。これによって、2018、2019年度の歳出は、合わせて約2000億ドル増加する。同時に決められた昨年のハリケーン被害への復興予算などを含めると、2年間の赤字増は約2300億ドル。昨年末に成立した減税による赤字増が同じ2年間で約4200億ドルであるから、その半分程度の大きさの赤字が、さらに積み重ねられたことになる。

議会による歳出上限の引き上げ幅は、トランプ政権の要請すら上回っている。トランプ政権は、歳出上限の取り扱いについて、国防費は引き上げるものの、それ以外の部分については上限を引き下げ、全体では裁量的経費を減らすよう提案してきた。

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