どうすれば「運」を引き寄せられるのか? 特別対談 松本大×三田紀房(その3)
三田:そう考えると、運だけですべての局面を乗り切ることはできませんし、運がいいと言われている人ほど、誰も見ていないところでしっかり考え、努力をしているのでしょう。
私のアシスタントだった彼も、編集者から企画を受けて、3日間でネームを描いて持って行ったからこそ、連載につながったのだと思います。これが、もし1週間も2週間もかけていたら、仕事を振ってくれた編集者のテンションも下がってしまい、連載にはつながらなかったかもしれません。
確かに、連載なんてそう簡単に決まるものではないのですよ。人によっては、独り立ちしてから2年、3年が経っても、まだ連載を持てないというケースがいくらでもあります。その意味では、確かに周りから言わせると、彼は運が良かったということになるのかもしれない。
けれども、連載を持つというラッキーを引き寄せたのは、紛れもなく、企画を受けてから3日間でネームを描いて持って行ったからです。編集者だって、たったの3日間でネームを持って来られたら、それ自体がサプライズですし、この作家と一緒に何かやってやろうという気にもなるでしょう。運は偶発的なものではなく、何とかそれを引き寄せようと努力するからこそ、恵まれるものなのです。
松本:「インベスターZ」の受け売りではありませんが、動物って獲物を捕えるとき、前かがみになるじゃないですか。運をとらえるというのは、まさにその感覚に似ていると思います。プールサイドに寝そべっていたのでは、目の前を通るチャンスも見逃すことになります。だから、仕事をするときは前のめりくらいでちょうど良いのかもしれませんね。
三田:たとえば投資のチャンスをつかもうとしたら、どういう努力をすれば良いですか。
松本:債券と株式では、ちょっと違います。債券の場合、景気の読みが勝敗を決するといっても過言ではありません。
債券はこれから先、景気が悪くなるという見通しが高まると、金利が下がり、債券価格は上昇します。つまり「景気が悪くなる=債券価格が上昇する」、「景気が良くなる=債券価格が下落する」という関係が明確で、この先、景気が悪くなるのに債券価格が値下がりするというような、ねじれた動きにはなりにくい性質があります。
ですから、景気を読むということが、債券投資ではとても重要になります。私が債券部にいた頃は、たとえばタクシーに乗った時など、運転手に必ず「最近、景気はどうですか?」と聞くようにしていましたね。もちろん、レポートの類にも目を通してはいましたが、こうした生の声を重視していました。