北朝鮮が煽っても変わらない「竹島」の真実 国際法上の整合性では日本が優位なのだが…

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だが北朝鮮からやってきた応援団はこれに抵抗し、竹島を記載した旗を振った。同時期に韓国に入った「三池淵管弦楽団」も、玄松月楽団長が「済州島の漢拏山(ハルラサン)も我が祖国」という歌詞を「独島(トクト、竹島)も我が祖国」と変更して歌を披露している。

「竹島領有について歴史的事実や国際法上の整合性では日本が優位なのに、戦略に欠けているために韓国に負けている」――。竹島の日の創設メンバーで、竹島問題の第一人者である下條正男拓殖大学教授はこう語る。「日本が竹島の領有を主張すると、必ず韓国が過敏に反応してくる。これに連動するのが中国だ。2005年3月に島根県が竹島の日の条例を作ったが、この直後に韓国や中国では反日運動が激化した」。

実際に盧武鉉大統領も2005年3月7日に「歴史・独島問題を長期的、総合的、体系的に取り扱う専担機関の設置」を指示し、4月には「東北アジア歴史財団」を発足させた。竹島の領有を主張する市民団体や在外同胞を利用する手法は、慰安婦問題とまったく同じだ。

出遅れ感のある日本の領土問題対策

文在寅大統領も、今後竹島問題にさらに深くコミットする可能性もある。2月11日には訪韓中の金永南北朝鮮最高人民会議常任委員長や金正恩朝鮮労働党委員長の実妹である与正氏らと「三池淵管弦楽団」の公演を堪能。歌詞を竹島に替えた玄松月氏の歌も鑑賞し、「心を合わせて難関を突破しよう」と金与正氏らに呼びかけたと報じられた。

これらに比べて出遅れ感のある日本の領土対策だが、2013年に領土・主権対策企画調整室を内閣官房に設置。2018年1月には日比谷に「領土・主権展示館」をオープンし、領土問題の啓蒙に努めているが、まだ万全とはいえない。

領土問題は歴史問題と重なる部分が大きいが、敗戦というタブーが国民の目から事実を隠したことで禍根を残した。一義的に重要なのは国際社会で日本政府が主張を続けることだが、それを支えるのは国民の世論だ。そのためにも、冒頭に記した学校での教育のあり方が重要なファクターであることは間違いない。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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