小田急vs京王「多摩の陣」で最後に笑うのは? 春のダイヤ改正で通勤スタイルが様変わり

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京王相模原線と小田急多摩線の列車が多摩ニュータウンで併走する。双方のダイヤ改正で沿線の利用者はどう動くのかに注目が集まる(写真:しーちゃん/PIXTA)

京王は列車内の中吊り広告で「京王なら浮いた電車代であれも買える」と告知し、値下げのPRに余念がないが、値下げを行う以上、京王も無傷ではいられない。今回の運賃引き下げで「12億円の減収になる」と京王側は予想する。

しかも、たとえ多摩センターで互角の戦いができたとしても、小田急と京王は並走する区間も多く、2つの路線の中間に住んでいる利用者を中心に、京王から小田急にシフトする利用者が出てきても不思議はない。多摩センターで両者が激突するようなインパクトはないが、薄く広く、じわじわと流出が進めば、経営への影響も小さくはないだろう。

小田急複々線化が京王の先行きに微妙な影を落とす。不透明な将来に備えて、加算運賃という「虎の子」をもうしばらく手元に温存するという選択肢もあったが、京王は加算運賃の引き下げという、攻めの手を選んだ。小田急が30年近くにわたる複々線化の果実をようやく享受しようというその日に、京王は40年近くにわたって蓄えてきた「虎の子」の取り崩しを決めた。小田急同様、京王も長年に作戦を練っていたのだ。

多摩ニュータウンの活性化につながるか

今春のダイヤ改正を小田急と京王の利用者争奪戦という構図で切り取ってきたが、視野を広げるとまったく違う様相が見えてくる。多摩市が作成した資料によれば、多摩ニュータウンの域内人口は約10万人で、ピーク時の人口を今も維持している。しかし、居住者の高齢化が進んでおり、2020年代後半には人口減少に転じるとみられている。若い世帯を呼び込むことは、多摩ニュータウンの機能維持にとっても急務だ。

多摩ニュータウンも住民の高齢化に直面している。都心へのアクセス向上は、若い世代の呼び込みにプラスに作用する可能性がある(写真:gandhi/PIXTA)

混雑解消、所要時間短縮、さらに運賃値下げで、多摩ニュータウンと都心を結ぶ鉄道の利便性は格段に改善される。この利便性に引かれ、多摩ニュータウンへの移住を考える若い世帯が増えるかもしれない。

京王の紅村社長は、「今回のダイヤ改正で小田急への対策は十分にできているか」という質問に対して、「われわれの一番の課題は多摩ニュータウンの活性化だ」と答えて、「小田急との利用者争奪戦」という見方を否定した。

もし、京王と小田急の利便性拡充合戦が多摩ニュータウンの活性化につながるのであれば、真の勝者はニュータウンの鉄道利用者ということになるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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