小田急vs京王「多摩の陣」で最後に笑うのは? 春のダイヤ改正で通勤スタイルが様変わり

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今回のダイヤ改正で京王と小田急が激突するのは通勤ライナーだけではない。多摩ニュータウンの拠点駅である「京王多摩センター駅」と「小田急多摩センター駅」という、2つの多摩センター駅で両者が火花を散らす。

多摩ニュータウンの中心に位置する多摩センター駅。京王と小田急双方のダイヤ改正で利用者の争奪戦がいっそう熱を帯びそうだ(編集部撮影)

多摩センターと新宿を結ぶ区間で京王と小田急はライバル関係にある。京王相模原線(調布―橋本間)に京王多摩センター駅が開業したのは1974年。その翌1975年に、小田急多摩線(新百合ヶ丘―唐木田間)に小田急多摩センター駅が開業する。現在の1日平均の乗降客数は京王多摩センターが8万7000人、小田急多摩センターが約5万人と、京王が圧倒的な強さを見せる。

背景には京王が多摩センター駅開業当初から新宿との速達性向上に力を入れてきたことが挙げられる。また、多摩センター―新宿間のICカード運賃を比較すると京王が339円、小田急が370円で京王のほうが31円安いのも一因だろう。

新宿方面の利用者を直通列車で取り返す

この状況を打開すべく、小田急はダイヤ改正で大胆な手を繰り出した。現在の朝ラッシュ時間帯、小田急多摩線の急行や多摩急行は代々木上原から東京メトロ千代田線に直通して大手町方面に向かうが、ダイヤ改正ではこれを廃止。新宿方面に直通する通勤急行や急行を新設することにした。なぜか。

京王は相模原線で新宿に直通する急行や区間急行といった速達列車を運行しているが、小田急では利用者が速達列車で新宿に向かう際は途中駅で乗り換える必要がある。これまでは、新宿に直通する京王と、大手町方面に直通する小田急といった形ですみ分けができていた。

だが、そのすみ分けにより新宿方面の利用者が京王を選ぶ結果となっていたのも事実だ。小田急は複々線化という千載一遇のチャンスをとらえて、長年抱えていた課題の解決に動いた。小田急の星野社長は「ボリュームゾーンの新宿方面において、京王さんからのシフトを考えた」と言い切る。

小田急多摩センターー新宿間を直通する通勤急行の新設で、ラッシュピーク時の所要時間は40分となる。大手町方面に直通する多摩急行はダイヤ改正で姿を消す(撮影:風間仁一郎)

新宿方面の利便性が拡大する反面、これまで大手町方面へは乗り換え不要だった多摩急行などの利用者にとって、ダイヤ改正後は乗り換えが必要になる。

こうした利用者からの恨み節も聞こえてきそうだが、星野社長は「新宿方面と千代田線方面の両方を追うのは戦略上難しい。乗り換えの手間をかけることになるが、千代田線に直通する列車の本数も増やすので利便性は高くなる。許容していただけるのではないか」と話す。

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