「中東の和平を邪魔するアメリカ外交の傲慢」コロンビア大学地球研究所所長 ジェフリー・サックス

“力”と“脅し”の政策が憎しみの連鎖を引き起こす

 04年、ブッシュ大統領はパレスチナの民主化を要求したが、その実現へのプロセスは明言しなかった。一方のハマスは、06年1月のパレスチナの選挙に勝利し、正式に政権を発足させた。アメリカ政府はその後もファタハへの支持を続け、同政権に露骨な介入を続けていった。

 ハマスが06年の選挙で勝利したとき、アメリカ政府とイスラエル政府は、新しく成立した暫定政府に対して金融制裁措置を講じた。その措置には、イスラエルによるパレスチナ側の関税収入の送金中止も含まれていた。アメリカとイスラエルはハマスに対し、金融支援継続の条件として、イスラエルの存在権を認めることを要求した。

 アメリカとイスラエルは、暫定政権の誕生以前から、ハマスを力ずくで屈服させられると信じていた。これは交渉というより、“力”と“脅し”が解決を生むという傲慢な考え方だ。結局その後、両国は事態の推移にショックを受けることになる。

 両国政府の圧力によって、人口過密となったガザ地区のパレスチナ人は、水や食糧、医薬品も入手できなくなり、安全さえ保障されなくなった。イスラエル軍は形式的にはガザ地区から撤退したが、実質的には同地区の国境とインフラ、交通、課税を管理し、それだけでなく同地区への攻撃の応酬として、定期的に軍隊を派遣し、ハマスの指導部を逮捕したり殺害したりしてきた。

 こうした状況下で、ハマスとファタハの内乱が勃発した。アメリカとイスラエルの政府は、ファタハのマフムード・アッバース大統領にハマス主導の暫定政府を解散させ、西岸地区にファタハ主導の政府を樹立するよう要求している。

 ガザ地区は現在、ハマスの支配下にある。ヨルダン川西岸地区はもはや無法地帯といえる。イスラエル政府はさらにガザ地区を制圧し、同地区の人々も服従させられると主張しているが、パレスチナには多くの武器と、多くの死を覚悟した若者がいる。イスラエル政府の思惑どおりには事は進まないだろう。

 いま同地区では、憎しみが憎しみを生み、解決はより困難な状態となっている。もはや民主的な国家成立に希望を見出している人はわずかだ。それでも私は、イスラエルとパレスチナの和平の望みはいつかかなうはずだと信じている。希望を失いたくはない。

(C)Project Syndicate

ジェフリー・サックス

1954年生まれ。80年、ハーバード大学博士号取得後、83年に同大学経済学部教授に就任。現在はコロンビア大学地球研究所所長。国際開発の第一人者であり、途上国政府や国際機関のアドバイザーを務める。『貧困の終焉』など著書多数。

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