日本でバカ売れ「高級チョコレート店」の本音 フランス人職人は日本ではスター扱い

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ブイエ氏は、日本の柑橘類を使ったチョコレートを作るなど、日本専用商品の開発にも積極的に取り組んでおり、「ここ(サロン・デュ・ショコラ)での商品の7割は、リヨンにある本店のものとは異なる」と話す。ブイエ氏は、日本で販売するチョコレートは、日本で作ることにもこだわっている。

日本市場に熱視線を送っているのは、ブイエ氏だけではない。実際、バレンタインデーを目前に控えた1月には、フランスの著名チョコレート専門店が相次ぎ東京へ進出。13日には、東京・広尾に「アルノー・ラエール」がオープンしたほか、1月18日には南青山に「ジャン=シャルル・ロシュー」が開店。さらに、20日には青山に再上陸を果たした「ファブリスジロット」が、初の路面店をオープンした。

日本は職人にとって「学ぶ場」にもなっている

東京・広尾に出店した「アルノー・ラエール」(写真:アルノー・ラエール提供)

「日本人の男性が私の店にやってきて、『あなたのすばらしいチョコレートを買うために香港から飛行機で今来た。数時間後に飛行機で戻る』と言ってくれたことがある」と、ラエール氏は振り返る。同氏はすでに日本で顧客を開拓しており、今年のバレンタインデーは、札幌から福岡まで17カ所で販売されることになっている。

実は、日本のチョコレート市場はそこまで大きくない。現在、日本のチョコレート消費量は1人当たり年間2kgに上るが、これはフランスの1人当たりの消費量(約7kg)の3分の1以下だ。しかし、日本はチョコレートにおいて、世界で最も洗練された市場だとチョコレート職人たちからは見られている。

サロン・デュ・ショコラで、リップスティック型のチョコレートを販売していたブイエ氏(筆者撮影)

「日本ではつねに商品をアップデートし続けなければ、忘れ去られてしまう。消費者の関心の移り変わりが激しいし、膨大な選択肢があるため、熱しやすく冷めやすい」と、ブイエ氏は話す。彼は今年、定番のチョコレートボックスの隣で、チョコレート製の派手なリップスティックとメーキャップミラーを販売した。

日本はチョコレート職人にとって学びの場にもなっているという。「日本では謙虚さと独創性を学んだ」と、ブイエ氏は話す。

「今の日本には、フランス人のチョコレート職人やパティシエと同等かそれ以上の職人がいる。フランスでは見たこともないような原材料を日本人職人たちは手に入れてくる。彼らは学びに貪欲だ。ケーキ作りでは、多様な味わいや香りのバランスを取るのに苦労しているように見受けられるが、とにかく熱心さが伝わってくる。何より、日本人職人のサービスとパッケージングのセンスは、フランス職人たちのずっと先を行っている」

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