日本でバカ売れ「高級チョコレート店」の本音 フランス人職人は日本ではスター扱い

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ピエール・エルメ氏の世界的な成功は、まさにそのいい例だろう。フランス・アルザス地方で4世代にわたって洋菓子店を営む家に生まれたエルメ氏は、日本であれば「人間国宝」と呼ばれるような存在であり、今日世界で最も著名なパティシエである。その独創性や技術の高さで洋菓子界に革命を起こし、洋菓子ブランドとしては初めてのコルベール委員会(フランスの著名ブランドや歴史・文化施設団体で組成された文化機関)入りも果たしている。

そのエルメ氏が、成功の礎を築いたのは日本だった。同氏が、ホテルニューオータニに初店舗を開いたのは20年前。それ以来、日本に15店舗、フランスに16店舗を開いている。「活動の9割は、日本とフランスで行っているといっても過言ではない」とエルメ氏は言う。

フランス職人たちの憂鬱と本音

「洋菓子が大好きな(ニュー・オータニ社長の)大谷和彦氏が私を信頼してくれたから今がある」と同氏はしみじみと振り返る。日本進出以来、エルメ氏の右腕として活躍した日本担当マネジャー、リシャール・ルデュ氏の存在も大きかった。同氏は1998年の進出以来、新たな職人やアーティストを発掘し続け、ピエール・エルメのイメージを高めるのに何役も買ってきた。

マカロンと花を組み合わせた、ピエール・エルメとフラワーアーティスト東信氏のコラボはそのいい例である。今や、ピエール・エルメの青山店は、世界中のほかの店舗が見習う、研究開発拠点となっているのである。

一方、日本人がチョコレートに熱狂する中、フランスのチョコレート職人たちは日本市場に対して不満を漏らし始めていることもまた事実だ。彼らが懸念しているのは、チョコレートがフランスでは、「日々の楽しみ」なのに対して、日本では「ぜいたく品」と考えられていることだ。もっとも、これは世界的な傾向もでもある。

「私は『宝石チョコレート』のようなものは、あまり好きではない」とオリヴェイラ氏は話す。そうしたものは、洋菓子をぜいたく品にしてしまう。洋菓子は基本的に、子どもたちが分け合って喜ぶような単純明快な楽しみであるべきだ」

実際、日本で毎年話題になるのは、「まるで宝石のような1粒〇〇円!」といった高級チョコばかりだ。これには、フランスのチョコレート専門店にも責任がないとはいえない。「先陣」が当初進出した際の価格がそのままデフォルトとなり、「高級チョコレート」という新たなカテゴリを作ってしまったからだ。その結果、チョコレートは、バレンタインデーやお歳暮など「特別な時」に消費されるだけのものになってしまったのである。

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