シャープ大型テレビが中国で「爆売れ」の理由 親会社・鴻海の強力バックアップの中身とは

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もちろん、富連網だけが中国におけるシャープ製テレビの販売網ではない。中国のEC最大手アリババの運営する「Tmall」での販売規模も小さくないだろう。

現地報道によれば、100万人を超える鴻海グループの従業員を動員した「天虎計画」と呼ばれるプロジェクトが存在し、従業員やその家族を含めた関係者への販促を行ったり、不動産デベロッパーと提携し、テレビ備え付けのマンションを販売してもらったりして、売り上げを拡大しているのだという。

さらに、シャープと鴻海が共同運営する堺ディスプレイプロダクト(SDP)は昨年、サムスン向けのパネル供給を打ち切った。これを自社向けに切り替え、競合による中国での販売拡大を阻止するようになったことも大きい。

シャープでは社員にECのクーポンを配布

ちなみに、鴻海出身でシャープ現社長の戴正呉氏も、2017年12月7日に同社が東証1部上場へ復帰した後、国内の社員向けに「感謝のしるし」と記された金一封と、シャープのECサイトで利用できる電子クーポンを配布している。社員の購買力も、売上高を伸ばす一要因といったところか。

シャープは、2017年度のテレビ販売台数目標1000万台を掲げている。対前年度比約2倍という一見無謀な計画にも思えたが、「現時点での進捗状況は順調」(野村副社長)。2019年には、鴻海が約1兆5000億円を投じて中国・広州に建設した第10.5世代(2940mm×3370mmのガラス基板を用いた液晶パネル)のディスプレー工場の稼働が始まり、そのパネルを使ったシャープ製の超大型テレビの販売も開始される。

日本の電機メーカーが次々とB to Cの家電事業から軸足を移す中、鴻海グループの強力なバックアップで躍進を続けるシャープは、いったいどこへ向かうのか。

印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者、東洋経済オンライン編集部、電機、ゲーム業界担当記者などを経て、現在は『週刊東洋経済』や東洋経済オンラインの編集を担当。過去に手がけた特集に「会社とジェンダー」「ソニー 掛け算の経営」「EV産業革命」などがある。保育・介護業界の担当記者。大学時代に日本古代史を研究していたことから歴史は大好物。1児の親。

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