「親の失敗談」が子どもの"最高の栄養"になる

「どう生きるか」を考える材料は身近にある

いちばん印象深かったのは、その先生は元日本兵で、どこか南の島の基地にいたときの話です。食料を確保する必要があって、よく機関銃でサメを撃ちまくっていたそうです。その描写が迫力満点で印象的でした。子どもの頃のいたずらの話もよくしてくれました。それで私が数学を好きになるということはありませんでしたが、その先生のことは大好きでした。私だけでなく、生徒たちはみんな好きだったと思います。

親の話から、生き方のモデルを学ぶことができる

ですから、私は、親である皆さんも、自分が子どもの頃の話をしてあげるといいと思います。皆さんのお子さんは、親である皆さんが子どもの頃のことをどれだけ知っていますか? ほとんど知らないのではないでしょうか? だいたいいつも、「なんで○○できないの。○○しなきゃダメでしょ。ああしなさい。こうしなさい」というようなことばかり言っていて、きっと子どもたちはみんな聞き飽きています。

皆さん自身の物語をしてあげると、親子の親しみがより一層増すのはもちろんですが、それ意外にもいいことがいっぱいあります。子どもはそこからなんらかの教訓を学ぶかもしれません。

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これは東京都の吉田さんという40代の女性に聞いた話です。吉田さんの長女は、今は高校生ですが、中学1年生のときに部活動の人間関係で悩んで、それを吉田さんに打ち明けてくれたことがありました。そのとき、吉田さんは娘さんの話を共感的に聞きつつ、自分が同じように中学生の時にクラスの人間関係で悩んだ話をしてあげました。すると、数年後に娘さんが、「あのときお母さんが自分の話をしてくれて、ありがたかった。お母さんも同じことで苦しんだんだ。だから、私のこともわかってくれているって感じた。それに相手との距離の取り方がすごく参考になった」と話してくれました。

また、親の話から生き方のモデルを学ぶことができるというのも大きなことです。子どもたちは人生経験が少ないので、生き方とか人生というものがまるでわかっていません。テレビや本、マンガ、アニメ、小説、伝記などで少しずつそれを学んでいくわけですが、いちばん身近な親の物語をしてあげるとすごくよい栄養になります。目の前にいる実在の人物ほどインパクトのあるものはないからです。

さて、こういったことは職場でも当てはまります。職場の上司という立場の人は、よく「○○じゃダメ。ああしなさい。こうしなさい」という話をしてしまっていると思います。聞いている人は、いい加減うんざりしています。それよりもぜひ、自分自身の物語を話してあげてください。そのほうがみんな真剣に聞いてくれますし、親しみも湧いてきます。何らかの教訓を得て生かしてくれるかもしれません。とにかく、いろいろな面でよい波及効果があると思います。

ただし、家庭で話すときも職場で話すときも、気をつけてほしいことがあります。それは、説教、道徳教材、自慢、愚痴などにならないようにすることです。そうではなく、物語であり文学であることが大事です。物語・文学のよさは、押し付けがましくなく、それでいて栄養がたくさんあり、そこから何を得るかは聞く方の自由ということです。

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