「次の新幹線はどこに?」熱を帯びる誘致合戦 四国はJRも前向き、山形はフル規格化狙う

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踏切を通過する山形新幹線。在来線を走るミニ新幹線ゆえに輸送トラブルが多い(traway/PIXTA)

山形新幹線は輸送トラブルが多いのだ。踏切があるので自動車との衝突事故も起きるし、野生動物も線路内に飛び込む。強風や吹雪も大敵だ。フル規格になれば高速化に加え、安定走行のための風雪対策も講じられるようになる。が、現状の福島─新庄間は在来線並みのレベルにとどまる。

「走行キロ当たりの輸送障害はフル規格新幹線の33倍に及ぶ。1日平均で0.5〜1便が運休・遅延している」(山形県総合交通政策課)。フル規格の新幹線を導入し、定時・安定運行してほしいというのが、県の考えだ。「フル規格化の議論は今をおいてない。この機を逃すと、次にいつチャンスが来るかわからない」。

問題は県内が一枚岩でまとまっていないことだ。日本海側の庄内地域にある酒田市はフル規格化と併せて、山形新幹線開業時からの悲願だった庄内延伸の実現に奔走する。在来線の陸羽西線・新庄─酒田間にミニ新幹線を走らせようというのだ。フル規格化だけでなく、なぜミニ新幹線を推すのか。

庄内地方の都市は上越新幹線を利用する

その理由は陸羽西線の利用者数が年々低迷していること。「大きな災害に遭ったら復旧されず、そのまま廃線にされかねない」と、市企画振興部の担当者は懸念を示す。陸羽西線にミニ新幹線が走れば、少なくとも廃線の心配はない。

庄内地方は山形新幹線への依存度が小さい。鉄道で酒田─東京間を移動する場合、新潟経由で羽越本線と上越新幹線を乗り継ぐ人もいる。同じく庄内地方にある鶴岡市は、さらに新潟寄りなので上越新幹線への依存度がずっと増す。

新潟駅では在来線の高架化工事が進む。2018年中に上越新幹線と羽越線特急の同一ホームでの乗り換えが可能になる計画だ(写真:tarousite/PIXTA)

羽越新幹線の実現を目指す新潟─秋田間の沿線自治体は新幹線の実現を最終目標としつつ、実現性の高い取り組みを段階的に求めている。まず、新潟駅では上越新幹線と羽越本線の同一ホームでの乗り換えに向けた工事が今春完了予定。今後は待ち時間を短くするダイヤ改正や、停車駅の少ない速達型特急の新設を求めていく。

「新幹線は時間もカネもかかる」(酒田市の担当者)。地元にとっては新幹線よりも、現実的な利便性向上のほうが先決のようだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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