「次の新幹線はどこに?」熱を帯びる誘致合戦 四国はJRも前向き、山形はフル規格化狙う

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リゾートマンションが林立する新潟県湯沢町。マンションは老朽化し、空室も目立つ(写真:yukky/PIXTA)

一方で、同じ北陸新幹線でも長野駅は、東京から日帰り圏となったため、長野市内の事業所数は新幹線開業前に比べ減った。大手企業が長野市内に支店や営業所を置くメリットがなくなったからだ。上越新幹線・越後湯沢駅を抱える新潟県湯沢町は、バブル期に林立したリゾートマンションが空室になるなど負の遺産に苦しむ。新幹線が開通したからといってまちが必ず発展するとは限らない。

さらに、近年の整備新幹線スキームの下では、JRは新幹線開業時に並行在来線を切り離すことができる。多くの場合、沿線自治体が在来線の経営を引き継ぐが、それは在来線の赤字を自治体が負担することを意味する。そのコストは沿線市民にはね返る。それでも、新幹線を待望する声は各地で根強い。さまざまな矛盾を内包しながら新幹線網はさらに広がっていく。

整備新幹線計画では、九州新幹線・長崎ルート、北海道新幹線(新函館北斗─札幌間)、北陸新幹線(金沢─敦賀間)の工事が現在進行中だ。さらに2016年暮れ、北陸新幹線の敦賀─新大阪間のルートが決定し、法律で定められた「整備計画」の完了にようやくメドがついた。それと前後して、「次の新幹線」をめぐる動きが各地で勃発している。

それは1973年に策定された「基本計画線」である。北海道新幹線の札幌─旭川間、山陰新幹線(大阪─鳥取─松江─下関間)など、全国を網羅する。九州、北海道、北陸の整備計画完了後に、こうした基本計画線が整備新幹線への昇格を目指す。

四国はJRも新幹線に前向き

最初のハードルは、国による事業調査費用の予算措置。2018年度予算案には「基本計画路線を含む幹線鉄道ネットワーク等のあり方に関する調査」とのみ記されている。ここに具体的に明記された路線は、実現に向け大きく前進する。

2017年7月、四国新幹線実現に向けた決起大会が東京で開催された(筆者撮影)

新幹線実現に向けて運動する多くの地域の中で、とりわけ熱心なのが四国だ。岡山から瀬戸大橋線を通り、高松経由で徳島、さらに高知、松山の3方面へ向かう「四国新幹線」構想を提唱している。

四国では行政と経済界が一体となって運動しており、行政が主導する他地域と一線を画す。四国新幹線の早期実現を目指す整備促進期成会の会長を四国経済連合会の会長(四国電力の千葉昭会長)が務めるほか、JRが新幹線整備に前向きなのもほかの地域にない特徴だ。JR四国(四国旅客鉄道)は在来線の高速化を進めているが、線形の悪い箇所を造り直すと、「新幹線を造るのと費用的にあまり変わらない」(半井真司社長)。新幹線なら国が負担してくれる。JR四国にとってはありがたい話だ。

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