総選挙前は華々しい舌戦を期待したい

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総選挙前は華々しい舌戦を期待したい

塩田潮

 私の机の脇に「政治用語集」と題する自前のノートがある。政治取材を始めて31年、現場で拾って書き留めた政治用語は500を超える。その中には政治家が残した語録も100余り含まれている。「政界一寸先は闇」「人生いろいろ」など、名言、迷言、失言、放言の類だ。
読み返すと、短い言葉からそのときどきの政治の動きや構造、歴史的背景、政治家の素顔までのぞくことができる。政治解剖の窓口の役割を果たしている。

 麻生新政権がスタートしたが、早くも新任の中山国交相の暴言が飛び出した。成田空港建設反対運動を「ごね得」と言い、「日本は単一民族」「日教組の子供は成績が悪くても先生になる」といきなり3連発だ。総選挙を控えて、新政権の懸念材料は、第一が内閣支持率、次がメンバーの舌禍であった。支持率は26日発表の数字では40%の後半から50%前後で、ご祝儀相場とはいえない低率だ。
もう一つの「口の災い」は、閣僚たちよりも、麻生首相自身の舌が心配されている。8月に愛知県の豪雨での軽率発言が問題になったが、アルツハイマー発言など、舌禍の前歴は歴代首相の中でも群を抜いて多い。

 だから、粗雑・軽薄首相は失格、と攻撃しようというのではない。もともと政治は言論の戦いだ。麻生首相や閣僚たちが、舌禍を恐れるあまり、口にチャックをすれば、何をどう伝え、説明するかという情報化時代の政治の役割を放棄することになる。言葉は生き物である。むしろ国民の側からすれば、失言や放言を誘い出すほどの華々しい舌戦を総選挙前に与野党で展開してもらうほうがありがたい。政治解剖の窓口と政治選択の材料が得られるからだ。
 麻生政権は、口をつぐんだまま、見せかけのご祝儀人気で総選挙に駆け込むようなことはせず、論戦を通して政権の中身を示した上で国民の審判を仰ぐべきだろう。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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