路面電車「次世代型」でも法律は旧態依然だ 車両の長さや速度の制限、再検討の必要は

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さらに、地域公共交通活性化・再生法第2条第6項は、「軌道運送高度化事業」として「より優れた加速及び減速の性能を有する車両を用いることその他の国土交通省令で定める措置を講ずることにより、定時制の確保、速達性の向上、快適性の確保その他国土交通省令で定める運送サービスの質の向上を図り、もって地域公共交通の活性化に資するもの」という事業を定めている。

そして同法では第二節で「軌道運送高度化事業」をまとめており、同法第10条で軌道法第3条に定める国交相の特許を受けたものとみなす場合を規定している。LRTを新たな公共交通機関として育成しようという目的が明確に示されており、道路使用について新たな視点を設けたといえよう。しかし、それでも速度制限、車両長などの法令による制限からの解放やLRTの整備推進に対する法令上の諸規制緩和については必ずしも十分に触れられておらず、これだけでは画竜点睛を欠くように思われる。

法律が成立、あるいは維持されるためには「立法事実」が必要である。対象となる事象に対して立法すべき目的・理由を定め、その目的を達成するためにどのような手段を設けるのが合理的か、つねに検討されなければならない。

LRTを取り巻く規制の再検討を

「次世代型」という冠が示すとおり、LRTは「昔ながらの路面電車復権」というよりも成熟社会を迎えた社会における「新交通機関」という位置づけである。LRTの整備にあたっては、車両や施設の改良、他社線との連携の仕方などを含め、新たな「街づくり」の構成要素である公共交通機関としての役割をどのように持たせるか、そのためにはLRTを取り巻く規制が妥当かどうか再検討をしていく視点が必要である。

LRTが公共交通機関として「街づくり」の新たな構成要素をなすのであれば、地域公共交通活性化・再生法の規定だけではまだ足りない。軌道法が本来想定していた路面電車を超えて、モノレールなどにも適用されるようになっている状況を考えると、道路のあり方や旧来からのカタカナ表記のままの軌道法や、それに関連する各種法令の再検討、再編成もなされるべきと考える。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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