たとえば、米国の税制改正は企業の長期投資を確実に促進する政策だと喧伝されている。だが、この法案は共和党が僅差で可決したものだ。最終的には覆されることになるかもしれないとの懸念を経済界が内に抱えていたとしたらどうだろう。その政策効果は宣伝に見合うものとなるのだろうか。長期的な主要政策において超党派の合意形成が大切なのは、まさに安定性を確保するためでもある。
政策の先行きが見通せないという点で、英国は米国の比ではない。ブレグジット(英国の欧州連合離脱)に加え、極左のコービン党首率いる労働党が将来、政権を奪う可能性もあり、英国経済は二重の攪乱要因にさらされている。
経済への無知を助長する状況
さらに厄介かもしれないのは、先進国の根幹を成す制度や組織への国民の信頼が揺らいでいることだ。今の米国ほどこうした状況が当てはまる国はない。主流派メディアから米連邦捜査局(FBI)に至るまで、トランプ大統領はあらゆる組織を執拗に攻撃している。また、基礎的な経済データについて、同氏がほとんど意に介さないことは言うまでもない。
一方で左派は自らの提案に反対する人たちを「民衆の敵」と決め付けるのに夢中で、経済への無知を助長し、中道派が空洞化するのを加速させているようだ。
短期的なリスクも存在する。その最大のものは、おそらく実質金利の大幅上昇につながる動きだ。
確かに、FRBが2018年中に4回の利上げを行ったとしても、ほかの中銀が追随するとは考えにくい。しかし、低金利は維持されるといくら市場関係者が信じていても、それは保証の限りではない。米国などで設備投資が活発化する公算は大きく、これが過剰貯蓄を抱えるアジア経済の減速と重なれば、理論的には世界金利は大きく上昇する。そうなれば借り入れコストは上がり、株価は崩落、金融市場の安定も失われかねない。
政治と経済が切り離されていたかに見えた昨今の状況は、唐突に終わりを迎えるかもしれないのだ。
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