介護離職をすると、自分の老後が危なくなる 「親への気持ち」は痛いほどよくわかる
それは、「経済面で大変なことになり、危険が大きすぎるから」です。香里さんの手取り年収は約336万円(税込み430万円)です。退職すればそれがゼロになってしまいます。
公益財団法人生命保険文化センターの調べによると、平均的な「介護期間」は約5年。仮に香里さんが5年間、仕事をせずに介護したとすると、1700万円弱の収入を失うことになります。10年以上介護した人も約16%に上っているので、もし10年なら3400万円近くになってしまうのです。
「親の年金」で暮らすと「悪循環」を招く
現在、香里さんの母は、ご自身の年金と香里さんの父の遺族年金を受給しており、月額は16万円ほどです。現状では香里さんが生活費として10万円強を入れているので、約27万円で暮らしていますが、香里さんの収入がなくなれば、2人で月額16万円以内で暮らしていかなければなりません。
香里さんは「家は持ち家ですし、なんとかするしかありません」と言いますが、はたして可能でしょうか。
たとえ、家が持ち家だったとしても、暮らすための費用がゼロになるわけではないのです。どんな費用がかかるでしょうか。固定資産税などで毎月2万円、食費4万円、光熱費3万円、通信費1万円、医療費2万円として、あっという間に計12万円になります。ほかに日用品や衣服費、最低限の交際費などもかかり、余裕は一切ありません。
そうなると、当てにしている介護保険サービスを使うのも控えがちになり、「自分で介護しよう」と考えるようになります。すると、香里さんには経済的な余裕も、自由な時間もない、という状態になり、友人と外食したり、趣味のために外出したり、ということもしにくくなります。こうなると、悪循環です。香里さんにストレスがたまるのは明らかですし、「この生活がいつまで続くのだろう……」と思い詰めることにもなりかねません。
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