生産中止?「ジャンボ機」が世界から消える日 2階建て「A380」と「B747」の受注が近年低迷
これまでの国際線は大型機で大都市のハブ空港まで飛び、そこから地方都市への便に乗り継ぐ「ハブ・アンド・スポーク」モデルが主流だった。A380が開発されたのは、発着枠の空きが少ないハブ空港同士を結ぶ路線でより多くの客をまとめて輸送するためだった。実際エアバスは今後ハブ空港の混雑度が上がるとして、2017年からの20年間でA380を含む大型機の新規需要として約1400機を見込んでいる。
だが中型機の登場で地方都市であっても直行便を飛ばせるようになり、「ポイント・トゥ・ポイント」の路線展開が増えてきた。デルタ航空とユナイテッド航空の米大手2社は昨年、747-400の機体を一斉に退役。デルタは後継機として成田―米国・デトロイト線などにA350を導入した。
また、ルフトハンザドイツ航空は昨年12月、羽田―ドイツ・ミュンヘン線の機材を4発エンジン機の「A340」からA350へと変更した。同社のドナルド・ブンケンブルグ日本・韓国支社長は「ゆったりとした座席構成を実現したうえ、以前の機材より燃料消費量は25%減り、騒音も50%低減した」と満足げだ。
かつての”ジャンボ”の栄光は消えた
航空会社の戦略の変化に影響を受けているのは、ボーイングも同じだ。同社が747-400の後継として2011年に投入した超大型機「747-8」は、A380以上の苦戦を強いられている。
747-8の旅客機には現在受注残がない。昨年、大韓航空に3機、米空軍の大統領専用機として2機、そして非開示の顧客に1機納入されて以降、新たな受注は得られていない。貨物機は現在米物流大手のUPSなどが発注しているが、それでも受注残は12機にとどまる。
ボーイング関係者は「747-8の生産は続ける。中止の決定はしていない」としながらも、「貨物市場では需要の回復を示すポジティブな兆候が出ている。既存の貨物機の更新時期を考えれば、数年内に需要は上向くと考えている」と述べ、旅客機開発からの転換を示唆する。
「ひとくちに80%の搭乗率と言っても、500以上の客席があるA380であれば100席以上が空いているということ。小型機が1つ埋まってしまう規模だ。もはや必要性は感じられない」。大手航空会社の幹部はそうつぶやく。
原油価格の動向や各国の政治、伝染病など、航空会社はつねにあらゆるリスクにさらされている。いちばん恐れるのは、座席が埋まらないことだ。よほどの自信がないかぎり、超大型機の運航は難しい。LCC(格安航空会社)の台頭で、業界全体がコストに敏感になる中では大型機の復活は難しいといえる。
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