良好に見える日台関係だが実は懸案山積だ 自由貿易協定は足踏み状態になっている

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日台の外交官によると、これらの動きは中国が厳重な抗議をしないように外交的なアレンジが施されていた。そもそも、他の主要国の窓口機関は以前から「台北」という地名を含む名称を使っていたし、副大臣級の訪台も実現させていたのだ。

「マイナスからゼロへの改善に過ぎない」との見方が双方で支配的だ。日本としては、1972年日中共同声明で示された台湾が中国の領土の不可分の一部であるという中国の立場を「十分理解し、尊重する」という立場を変えるつもりはない。

日台経済連携協定は暗礁に

一方で、日台間で唯一実現可能で重要な日台経済連携協定(EPA)は暗礁に乗り上げている。

その大きなボトルネックが台湾での福島県産などの食品の輸入規制だ。2015年に台湾がこの規制を緩和どころか強化した時、日本側は「科学的な根拠のない措置」だとして反発した。台湾がこの規制をなかなか解除しないことに日本政府は苛立ちを覚え、台湾が自由貿易原則を守るつもりがあるのかどうか、そのこと自体が疑われている。

この日台EPAは日本より台湾に多くの恩恵をもたらす。関税が撤廃されてもされなくても、日本の工業製品は台湾で売れ続くだろうが、台湾からマンゴーやパイナップルが安価に流入するとなると日本の農家にとっては打撃となる。日台EPAを通すとなると、日本側は外交的にも大きな代償を払うことになる。

北京政府の怒りを買わないように、シンガポールやニュージーランドは台湾との自由貿易協定に署名する前に、中国との協定に署名していた。だが、日本はまだ中国と自由貿易協定を結んではいない。台湾側は協定の中で、台湾が国家であるというニュアンスの強い「テリトリー」や「アグリーメント」という文言が入ることを望んでいる。

次に、輸入規制の問題を台湾側から考えてみよう。台湾で「核食」と呼ばれるこの問題はあらゆる意味で敏感な話題だ。ここ数年、台湾では食品安全関連のスキャンダルが続発していることがまず根底にある。また、2016年に計画されていた関連の公聴会は野党・国民党の抵抗で流れてしまったように、政治化されやすい議題でもある。さらに、蔡英文がひまわり学生運動のボトムアップ的なアプローチを是認したことも、彼女がこの問題で民意を無視して規制撤廃を決断できない遠因となっている可能性がある。

時間が経つにつれ、問題解決の機運はどんどん薄れていくだろう。日中平和友好条約締結40周年を迎える今年は両国の首脳相互訪問も予想され、大幅な関係改善の兆しがあり、対台関係をグレードアップするのは難しくなってくる。台湾側に目を向けると、2020年総統選挙の前哨戦である地方選挙が年末に迫っており、蔡総統による決断の政治的コストは上がっていく。

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