良好に見える日台関係だが実は懸案山積だ 自由貿易協定は足踏み状態になっている

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東京大学で国際政治を研究する松田康博教授は、「日台EPAについての議論を再開するために、台湾は2016年のうちに食品規制を解くべきだった」と語る。

日台EPAの戦略的な意味は大きい。日本は台湾にとって第3の貿易相手国で、このEPAが成立していれば、日本が推進中のCPTPPに台湾が第2陣で加わるというシナリオは描きやすかった。台湾与党・民進党の蕭美琴立法委員は台湾が地域統合から排除されると、台湾の経済的生存に非常に不利だ、と話す。そうした状況で「(日台EPAは)他の国にとっての範例となり、メッセージとなる」とその重要性を強調する。

こうして見ると分かる通り、蔡英文政権誕生以降、日台関係の実質的な進展はほとんどなかったと言っていい。実は馬英九政権時代の方が日台関係が前進していた、と多くの関係者は言う。確かに、世間を驚かせた2013年の日台漁業協定は記憶に新しい。馬英九は中台両岸関係をうまく管理していたので、中国政府は馬英九政権が日本と関係強化をある程度許容していた。逆に、今の中国政府は台湾独立を志向する蔡英文政権に圧力をちらつかせている。

知日派育成が日本政府の急務に

他にも日台関係には懸念がある。日本の植民地世代に日本語を話していた台湾の人々が続々とこの世を去っており、台湾には昔ほど深い日本理解がなくなってきている。そのため、台湾での知日派育成が日本政府の急務となっている。

台湾における中台統一派の過激化も心配のタネだ。終戦の日に反日デモを行っている他、日本人技師・八田與一の銅像や神社跡のこま犬を損壊した疑いが濃厚だ。こうした勢力が、日本企業や日本人に危害を加えるようになると、日本人の台湾に対する好感度は下がらざるを得ない。

また、長期的には安全保障面での協力が望まれる。台湾は地政学的に重要な位置にあり、南シナ海へつながる台湾海峡のシーレーンを確保することは日本の国益に合致する。だが、上記の「1972年」ラインがある以上、表立った協力は現実的でなく、一部の保守政治家が主張する日本版「台湾関係法」制定の目処は全く立っていない。

表面的なお互いの親近感と違い、日台関係はなかなか進展しない。そして、その親台感情も永遠ではないかもしれない。

「日本台湾祭り」の主催者で在日歴30年の銭妙玲・台湾新聞社社主は、台湾文化をさらに伝播していく必要性を痛切に感じている。「ブームはいつか冷めるもの。中国は国も大きく、人も多く、経済も発展している。いつまで台湾が日本人に愛し続けられるかは分からない」。

日台関係には、多くの懸案が山積しているのである。

舛友 雄大 中国・東南アジア専門ジャーナリスト

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ますとも・たけひろ / Takehiro Masutomo

カリフォルニア大学国際関係修士。2010年中国メディアに入社後、日本を中心に国際報道を担当。2014年から2016年までシンガポール国立大学で研究員。

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