野村がリーマンの欧州・中東部門も買収、「世界一流」への野望
野村ホールディングスは23日、経営破たんした米国の証券大手リーマン・ブラザーズの欧州と中東地域の株式・投資銀行部門で働く約2500人を野村グループに雇い入れると発表した。ITシステムなど関連インフラも含めて、同地域におけるリーマングループの主要業務を引き継ぐが、トレーディングなどの資産と負債は継承しない。
野村はこれに先駆け22日に、リーマンの日本を含むアジア・太平洋地域で働く3000人超のリーマングループ従業員と、関連業務を継承することで基本合意(関連記事)。野村はリーマングループの従業員約5500人を一手に引き受けて、これまで欧米の競合に出遅れていた海外事業を強化する。
野村は、リーマンの米国事業を買収する英銀行大手バークレーズなどと、欧州・中東部門のおける事業・雇用の承継を争ったもようだが、条件面で野村に軍配が上がったようだ。関連する落札額は明らかにしていないが、アジア・太平洋地域が約200億円で落札した点から、欧州・中東部門も数百億円規模と推定される。数百億円規模の初期投資で、北米を除くリーマンの事業ノウハウと人材、顧客基盤を入手することになる。
リーマンの欧州・中東地域における雇用・業務の継承は、原則として全業務が対象となる同アジア・太平洋地域とは異なり株式・投資銀行部門に限定、債券部門などは引き継がない。いずれも「リーマン」ブランドは継続しない方針だ。
日本のバブル経済絶頂期に国際的な権勢を振るった野村だが、その後は、法人顧客の資金運用で生じた損を証券会社が穴埋めした損失補填の発覚などのいわゆる「証券不祥事」や総会屋事件などが響き、今ではすっかり欧米の大手金融機関に後れを取っている。リーマンの人材引き受けと事業ノウハウの吸収で、それを一気に巻き返す好機を手にしたというワケだ。
しかしながら、野村の日本を除く欧州、アジア地域における人員は約3000人強で、リーマンの約4000人に比べて規模で見劣りする。同様の業務を手掛ける競合とはいえ、異文化で育った大量の人材を、どうコントロールしていくかは大きな課題となる。
かつて「野村の競争相手は国内の大手証券会社ではなく、世界の一流金融機関」と宣言し、野村を世界的な証券会社に飛躍させた「大田淵」こと野村証券の田淵節也元会長が、逝去したのが今年6月。今月9日には「お別れの会」を開いた。野村が再び国際的な金融機関として、世界に名をとどろかせる可能性を得たのは、偶然ではないのかもしれない。
(武政秀明 =東洋経済オンライン)
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