ロシア主導でシリアの和平は実現するのか クルド人問題で意見割れるイランとロシア

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ロシアは、「和平協議は国連主導で」とリップサービスを見せつつ、黒海に面したリゾート地ソチで独自の協議の場を設けようとしている。目的は、新憲法制定とそれに続く議会選挙だ。

前出のシリア反体制派幹部は、米国のほか、彼らの大義を支援していた諸国(サウジアラビア、カタール、ヨルダン、トルコ)がすべて、ロシアに譲歩したと語る。和平協議の主な舞台は、国連主導のジュネーブではなく、ソチだ。

「米国、フランス、サウジアラビア、どの国の人と話しても、そのような理解に至る」とこの人物は語る。「このシナリオどおりになるだろうし、反対する国もないだろう。世界中がシリア内戦にうんざりしているからだ」

ロシア側の提案には、シリア難民も投票できるような選挙の実施に向けて、新政権を樹立することが含まれている。

しかし、このシリア反体制派幹部は、「スケジュールが6カ月なのか、それとも2年、3年なのか。すべてはロシアと米国の合意によって決まる」と話している。さらに「ロシアと米国の見解が一致しなければ、協議全体が振り出しに戻る可能性がある」とも言う。

クルド人問題で意見割れるイランとロシア

ロシアは政治的プロセスによる成果を重視しているが、あくまでも自国主導にこだわっていると語るのは、国際危機グループ(ICG)のアナリスト、ノア・ボンジー氏だ。

「その点でロシアが優れたセンスを持っているとは思えないし、政治的解決の程度によっては、ロシア国内でも、ロシアの同盟国とのあいだでも、利害対立が生じることになるだろう」との見方を同氏は示した。

シリア領内のクルド人問題は、ロシアとイランの思惑が分かれる点の1つだ。

イラン政府高官は最近、米国が支援していたクルド人勢力の支配地域を掌握すると発表した。一方のロシアは、クルド人勢力と彼らを支援する米国側との合意を成立させている。

クルド自治政府の有力政治家であるファウザ・ユセフ氏は、「内戦勃発当初から、ロシア、イラン、アサド政権のあいだには温度差があった」と指摘。クルド人勢力には「考慮すべき大義がある」というのがロシアの立場だ。

一方、シリア政府は、クルド人に対して独自の警告を行いつつも、シリア西部に残る反体制派の拠点への掃討作戦を進めるなかで、クルド人には引き続き自治を認める可能性がある。

南西部の情勢には、別の要因が作用している。すなわち、イスラエルがイランの支援を受けた武装勢力を国境から排除しようとしており、シリア内戦がイスラエルの軍事行動を誘発する可能性もある。

「シリア各地にはまだ重要な問題が数多く残っており、戦闘をエスカレートさせる可能性がある」と国際危機グループのボンジー氏は語った。

(Tom Perry 翻訳:エァクレーレン)

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