2018年、ギリシャ債務問題の再燃に注意 みんな忘れているが、本当に大丈夫なのか
さて、ギリシャ経済は2013年に入り下げ止まり、回復に向かうかに見えたが、足元にかけてはゼロ成長が常態化している。ひとことで言えば、輸出を中心に持ち直しの動きが見られるものの、その輸出の「景気けん引力」がそもそも乏しいため、外需の好調が内需に反映されない状態が続いている。
いわゆる「双子の赤字(貿易赤字と財政赤字)」に関してはすでに解消されており、フロー面での調整は一服している。一方で、「ストック面」での調整は停滞を余儀なくされている。とりわけ政府の借金を意味する公的債務残高の削減は進んでおらず、その規模は2017年6月末時点で3100億ユーロ(約42兆円)と、名目GDPの175%に相当する。経済のゼロ成長が常態化している中では、政府の借金など返せるわけがない。
結局、ギリシャ経済は、身の丈以上の借金を負ったために正常な経済活動が営めない、「支払い能力(ソルベンシー)危機」の状態が今も続いている。こうした中では、借金の返済負担を政策的に軽減して財政出動の余地を広げていくことこそが、事態の改善が見込まれる唯一の手段と言える。
幸か不幸か、これまでの金融支援の結果、ギリシャでは政府債務の大部分がEUとIMF(国際通貨基金)からの借入となっている。当事者間の合意さえ成立すれば、債務の返済負担に対する救済措置が成立する見込みがあるということでもある。
「リスケ」がメインシナリオだが…
ギリシャの財政状況を考えると、「第3次金融支援」が終了した後も、何らかの金融支援が必要不可欠となる。
最も実現可能性が高い政策オプションは、利子減免や支払い延期などといった「リスケジュール」による債務再編だろう。この手段であれば、ギリシャ側にとっては負担の大幅な軽減につながるし、EU側にとっては損失の顕在化も避けられる。
政治的にも、景気底打ちと「支援の卒業」を実績としたいギリシャのチプラス首相にとって、また支援疲れの世論に配慮したいEUの指導者にとって好都合である。これがメインシナリオとなりそうだ。
EUでは、カタルーニャの独立問題に揺れるスペインや、2018年5月までに総選挙を控えるイタリア、2019年3月までをEU離脱の期限としている英国など問題が山積している。それらを抱えながら、ギリシャの債務問題が再燃すれば、欧州各国における反EUの機運を刺激しかねない。EUとしては、2018年いずれかのタイミングで再燃する可能性のあるギリシャ債務問題は、何としても軟着陸させたい問題だ。
だが、ギリシャ債務問題は、その節目ごとに混乱が生じ、欧州の金融市場を不安定化させてきたことも事実だ。第3次金融支援終了後の支援の在り方を巡る交渉もまた、一筋縄ではいかないと考えられる。実は、ある大きな問題が存在するのだ。
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