デジタル技術が世界の貧困格差を解消する−−ジェフリー・サックス コロンビア大学地球研究所所長

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商業サイドではモバイル革命によって農産物の流通革命が起きている。農家と小売業者は携帯電話と流通ハブを通して直接結びつき、農家が農作物を高い

“直売”価格で販売できるだけでなく、買い手も無駄を最小にして消費者に低価格で農作物を売ることができるようになっている。バリューチェーンの強みは農家の所得を増やすだけでなく、農作物の多様化と農業の底上げを図ることができることだ。また世界をリードするインドのソフトウエア企業は、デジタルネットワークを通して世界中の情報処理のアウトソーシング業務などを引き受け、地方で新たな雇用を創出している。

教育も変革されるだろう。あらゆるレベルの学校が、世界的なデジタル教育ネットワークに参加するようになるだろう。米国の子供たちは本やビデオを通してだけでなく、各国にある教室をネットワークで直接結び付けることで、アフリカや中国、インドについて学ぶことができるようになる。生徒はライブチャットや同じカリキュラムの学習を通してだけでなく、デジタルネットワークを通して送られてくるビデオ、写真、教科書を通してアイデアを共有できるようになるだろう。

大学も多くの学生が他の大学の授業やディスカッショングループ、研究チームに同時に参加する国際クラスを提供するようになるだろう。コロンビア大学では、エクアドル、ナイジェリア、イギリス、フランス、エチオピア、マレーシア、インド、カナダ、シンガポール、中国の大学と協力して、多くの学生が同時に参加できる「国際クラス」を提供している。

私は『貧困の終焉』(早川書房刊)の中で極貧は2025年までになくなると書いた。現在の世界的な暴力、気候変動、食糧やエネルギー、水の供給懸念を考えれば、この予測は性急だったかもしれない。しかし、デジタル情報技術が世界各国でもっと採用されるようになれば、話は別だ。なぜなら、そうした技術によって人々は市場や社会的ネットワークに参加し、共通の問題を解決するために協力することができるようになるからだ。

ジェフリー・サックス
1954年生まれ。80年ハーバード大学博士号取得後、83年に同大学経済学部教授に就任。現在はコロンビア大学地球研究所所長。国際開発の第一人者であり、途上国政府や国際機関のアドバイザーを務める。『貧困の終焉』など著書多数。

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