中国の投資拡大で急変するカンボジアの実情 シアヌークビルで起きていること
中国はプノンペンに至る4車線の高速道路を建設する予定であり、シアヌークビル国際空港も拡張を進めている。同空港を利用する国際便の約7割は中国向けの発着だ。また「一帯一路」計画では、最終的に鉄道網の改善も盛り込まれた。
増加する中国人観光客
中国からの投資の焦点になっているのはシアヌークビルだが、こうした現象は決してここに限ったものではない。
カンボジアを訪れる観光客は、中国人が一番多い。その数は今年1─7月で63万5000人に上り、観光客全体の5分の1を占めた。カンボジアは、中国人観光客を2020年までに200万人へ増加したいと考えている。
2012年から2016年までの間、中国からの対カンボジア投資は40億ドルを超えた。米国からの投資と比べると、昨年操業開始したコカコーラ工場の1億ドルを計算に入れても、30倍以上となる。中国による昨年の援助額は2億6500万ドルで、日本による援助の2倍を超えており、米国と比較すると4倍に近い。
中国が建設したダムが、カンボジアにおける大半の電力を供給している。カンボジアの主力輸出品を生産する衣料品工場の約3分の1は中国企業のものだ。
また、カンボジアの対外債務58億ドルの半分近くは対中国であり、他のどの国に対する債務よりも何倍も多い。
またカンボジア政府の、中国政府に対する「政治的な借り」も大きくなっている。
フン・セン首相が来年の選挙を前に主要な政敵を逮捕し、その政党を解散させたことは、西側諸国からの批判を浴びているが、中国は、カンボジアによる秩序維持の努力であるとして支持を明言している。
逆に中国にとっては、カンボジアから地域的な問題を巡る忠実な支持を期待できるし、東南アジアに確固たる戦略拠点を確保することができる。シアヌークビルは、中国企業の租借地で挟まれており、カンボジアの海岸線の3分の1以上は中国企業に支配されている格好となる。
シアヌークビル向けの大型投資は、地主にとっては天の恵みだ。あるホテル経営者は、カジノスタッフの宿舎とするため、中国企業がホテルを買収するため、通常の2倍の金額を提示してきたと語る。この経営者は、もう働く必要すらなくなってしまった。
だが、借りる側にとっては悪夢だ。西側諸国の現地駐在員は「中国化」を話題にしている。中国人が自分たちよりはるかに高い金額を払うために、自分たちが締め出されてしまう現象のことだ。
不動産代理店のThim Sothea氏は、市場変化による厳しい教訓を得た。同氏の経営するシアヌークビル・プロパティはビーチに近い場所にあったが、地主から退去させられてしまったのだ。中国企業に2倍の賃料で入居してもらうためである。
「ここはチャイナタウン化しつつある」と同氏は言う。まだ新たなオフィスが見つからないため、カフェで取材に応じた。「ホテルや不動産を持っている金持ちにとってはよい話だが、それ以外は皆が不幸になっている」
冒頭のLao Qi氏にとっても、まったく問題はない。彼はすでに新たなレストランを開店する計画を立てている。今度はもっとビーチに近い場所になると期待している。
(Matthew Tostevin記者、Prak Chan Thul記者、翻訳:エァクレーレン)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら