それでは減税による景気刺激効果はどうか。大型減税はケネディ政権以降で7回実施されているが、その平均の失業率は7.0%。それが今回は4.1%(2017年11月)である。つまり好調な経済を更に刺激することになるので、景気が過熱してしまうかもしれない。すると今度は金融政策に跳ね返ってくる。つまり財政が緩和される分、利上げが早まるかもしれない。この点は、2018年2月に登場する新キャラ、ジェローム・パウエルFRB議長に注目ということになる。いずれにせよ、2018年はドル高となる公算が高い。
民主党は11月の中間選挙で「25+2」議席が必要
それでは、対する反乱軍、もとい民主党はどう戦うのか。ヒラリー・クリントンの敗北から1年、いまだ「喪中」が続いている感がある。党内を見渡せば、2020年大統領選候補に名前が上がるのは、バーニー・サンダース上院議員(76歳)、ジョー・バイデン元副大統領(75歳)、エリザベス・ウォーレン上院議員(67歳)といった高齢で新味のない顔ぶればかり。救世主はいまだ登場せず。しかし贅沢は言っていられないので、とにかく11月の中間選挙に全力を投入するしかない。
そこに立ちはだかるのは、単純な「算数」の問題だ。下院は任期2年なので435議席が全数改選となる。現在は共和党が240議席、民主党が194議席、空席1となっている。大差ではあるが、過去にそういった大逆転劇が絶無であったわけではない。
問題は上院である。任期6年なので、100議席が2年ごとに3分の1位ずつ改選となる。2018年は34議席が改選となるが、現職は民主党が25議席、共和党が9議席となっている。そして民主党が上院で多数をゲットするには2議席増が必要となるが、25議席を全部守ったうえで、相手の9議席から2つ奪わなければならない。ハードルは高そうだ。
今回の減税への評価は、中間選挙の大きな争点になるだろう。減税法案は、とにかく突貫工事で作業が進められた。しかるに税制は複雑な体系であり、「神は細部に宿る」とも言う。今後、「ええっ?こんなことになっちゃったの?」という声があっちこっちから出るのではないか。果たして1年後にはどんな評価になっていることやら。たぶん民主党側は「金持ちと大企業優遇で、庶民に冷たい税制」との非難を強めるだろう。そして共和党側は「景気の好調さはトランプ政権の功績」と突っぱねるだろう。二大政党の闘いは、いくつもの因縁を積み重ねて未来につながっていく。
こうしてみると、アメリカ政治はますます「親の因果が子に報い」のスターウォーズ叙事詩に似ているではないか。SWシリーズは次回のエピソード9(2019年12月公開予定)で完結するが、共和党と民主党の抗争劇はそれこそ未来永劫続けられるに違いない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら