アマゾンが放つ、「リアル店決済」攻略の秘策 米国では数百の飲食店に導入、日本上陸は?

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アマゾンは2017年10月、POS(販売時点情報管理)システム・機器を開発する米クローバー社とパートナー契約を締結。アマゾン本社のあるシアトルや、ニューヨーク、ワシントンD.C.など米北東部で大小さまざまな規模のレストラン数百店にアマゾンペイを順次導入している。T.G.Iフライデーズの事前注文のような、リアル店舗での利便性に即した仕組みを駆使しながら、「より多くの注文パターンや、さまざまな小売業、商品の販売に対応していく」(アマゾン)という。

日本のリアル店舗にはまだお目見えしていないアマゾンペイだが、「決して米国のユーザーだけに向けて作っているサービスではない」とゴティエ副社長。日本国内でも近く導入が始まる可能性はある。

使う側の立場になったサービスを作る

アマゾンジャパンの社員向けカフェでは社員証にひも付けられたアマゾンペイで支払うことができる(撮影:今祥雄)

ショッピングアプリを使うのとは別形式の決済サービスも模索する。アマゾンジャパンの社内にある社員向けカフェでは、域内に設置されている端末にカード型の社員証をかざすと、社員証にひも付けられたアマゾンペイで支払いを行うことができる。社内で財布やスマホを持ち歩かなくて済むのが利点だ。現在はアマゾン社員向けの展開にとどまるが、法人向けサービスとしてパッケージ化、販売することも目指している。

アマゾン入社以前にはVisa(ビザ)、PayPal(ペイパル)などの経営幹部を歴任し、長くペイメント関連業界に身を置いてきたゴティエ副社長。「消費者や加盟店が重視するのは、支払いという“瞬間”だけの利便性ではない」と強調する。

「たとえば映画のチケットをネットで買ってから映画館に出掛ける、というように、チェックイン(消費の起点)からチェックアウト(終点)までにさまざまなポイントがある。そのどこに不便があるのか、どうすれば解決できるのか、使う側の立場になって考えサービスを作っていかなければならない」(同)

国内勢では、EC大手の楽天やメッセンジャーアプリのLINEもオンライン・オフライン両にらみの決済サービスを育成中だ。単なる「支払いの電子化」にどんな価値をプラスできるのかが、勝敗を分ける重要なポイントになるのは間違いない。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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