宇都宮LRT「あの海外メーカー」が入札参加へ 路面電車には珍しい「狭軌」への対応が課題に

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そのため、新たな狭軌での製造は莫大なコストを要し、当然、価格に反映される。車両メーカー関係者の間では、1編成当たりの価格は日本メーカーと比較し、約1.5倍にもなると推測される。この金額で仮に最終入札したとして、日本メーカーに勝つ魅力を示すことができるのか。すでに宇都宮市は、参考価格としながらも、1編成当たり約3.5億円、導入予定の17編成合計での概算費用を税抜き約59億円と示している。

通勤時に大渋滞する鬼怒通り。その解消もLRT導入目的のひとつ (写真:宇都宮市建設部LRT整備室)

矢野室長は車両メーカー選定に関し、「価格やデザイン競争ありきではなく、性能、デザイン性、価格などを総合的に評価する。最終的に市の条件を満たしていれば、それを選定する」と強調した。

海外の高速列車における車両の入札事例を示すと、メーカーが入札のため、すべての資料を作成するだけでも、数千万円のコストを要する場合もあると言われる。車両メーカーが本気で受注を獲得にいくとは、すなわち、そういう姿勢を意味する。

反対派の圧力は依然つづく

1月19日が最終的な入札期限で、2月上旬に車両メーカーは選定される。車両設計を完了させた後、宇都宮市は車両の設計認可を国に申請。認可取得後はじめて、製造にかかわる契約を車両メーカーと取りかわす。

車両製造だけでなく、軌道敷設工事に関しても手続きが佳境に入っている。栃木県から国に対し、昨年10月10日に工事施工認可申請は進達済みで、国の標準処理期間は一般的に約5カ月と言われる。この申請が認可され、加えて、栃木県から都市計画事業認可が下りれば、現在の計画である2018年3月末までに着工される見込みである。

一見、順調にことが運ぶようにも映る宇都宮LRT整備事業だが、ここまでたどり着くにも様々な紆余曲折があった。軌道も車両も完全に新造して行う日本初のLRT事業であり、そして何より公共事業であり、民間企業が進めるのとは異なる勝手の違いがあった。また、相変わらず現在も、市の東に位置する芳賀町にある本田技研工業が、町から退去するなどの出所不明の噂も流される。

だが、矢野室長は動じない。

「新しいことを始める時、誤解が生じるのはやむを得ない。LRT整備室の仕事の進め方として、誤解があれば逃げずに正面から向き合い、説明して前に進んできた。これまでの時間は、あっという間だった。開業して一番列車が走りだすまで、われわれのその姿勢は変わらない」

開業予定の2022年3月までカウントダウンは進む。その残り4年3カ月は、宇都宮市にとって決して長くはない時間だ。

佐藤 栄介 ジャーナリスト

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さとう えいすけ / Eisuke Sato

青山学院大学でフランス文学専攻。デパート、商社勤務を経て、2012年から鉄道専門誌編集部所属。大学在籍時の南仏ニース留学経験を生かし、アルストム車両製造工場(ラ・ロシェル)、SNCFテクニサントル(パリ東)など、フランス取材に強みを持つ。パリ・サンジェルマンFCの熱狂的ファンでもあり、ヨーロッパ取材時には欠かさず試合に通う。

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