宇都宮LRT「あの海外メーカー」が入札参加へ 路面電車には珍しい「狭軌」への対応が課題に
今回、宇都宮市が採用した車両メーカー選定のプロセスは、2ステップあることが特徴だ。11月15日が参加申込書の提出期限と前述した。だが、この時点で市に書類を提出したことが、すなわち最終的な入札とはならない。
申込書を提出した3社に、市は路線概要図、技術提案書を作成するための資料などを配布した。各社は現在、それらを基に、再び入札すべきか否かの最終的な検討段階に入っている。
そして、いざ入札を決めた場合、最終の提出期限――2018年1月19日までに審査書類を宇都宮市に再提出する。これが2ステップ目で、本当の意味における入札完了となる。よって、現段階でいう入札3社とは、最終入札ではなく、いったん参加意思を示した3社との理解が正確だ。メーカーが市の要望を再検討し、参画不可と判断すれば最終入札をやめる可能性もある。
それこそが、先の海外メーカーからの「最終的に入札するか決断していない」との回答につながる。当然、各メーカーによる検討過程を外部から知ることはできない。だが、ともかく、宇都宮を走るLRTは現時点で3メーカーに絞られた。
他路線へ乗り入れ可能性を残す
宇都宮市が要望する車両の基本仕様として、注目は軌間1067mm(狭軌)だ。矢野室長は軌間の決定理由に関し、次のように話す。
「車内の通路の幅などを考えると、標準軌1435mmの車両のほうが広く確保でき、有利との声も確かにあった。だが、県域の鉄道――東武宇都宮線、真岡鐵道、JR日光線とすべてが狭軌。LRTも狭軌で製造したほうが、将来、乗り入れの可能性が残り、広域ネットワークに役立つという考え方を採用した」
宇都宮LRT整備事業には、市だけでなく栃木県の財政的な支援もある。県域の住民に対しても、その導入理由――将来的に県全体に広く走る可能性もある、と説明する必要があったことは容易に想像できる。
だが、この狭軌という仕様が、海外メーカーにとっては高い障壁だ。参加意思を示した海外メーカーは、世界の約50都市にLRT導入の実績を持つ。アジア太平洋地域にも進出を果たし、上海、台湾、そして、オーストラリアのシドニーでの導入も決まっている。だが、そのすべてが軌間は標準軌で製造され、狭軌による製造の実績はない。
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