おつまみ大手「なとり」に迫るイカ不漁の危機 「家飲み」需要で絶好調だった業績にブレーキ

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これまで、なとりはイカ不漁に伴う原料高騰に「スルメイカの産地変更」や「イカ製品の規格変更」を軸に対応している。産地変更とは、漁獲コストが日本産に比べて安価な韓国や中国産への切り替えだ。規格変更とは、容量を減らして実質的に値上げする、いわゆる「シュリンクフレーション」である。

コスト増を直接、販売価格に転嫁して値上げをすると消費者から敬遠されてしまう。そこで、容量を小さくして価格を極力変えない戦略でもある。広く食品業界で普及している手法であり、何もなとりに限ったことではないが、このシュリンクフレーションも原料高騰をしのぐ有効策となっている。

加えて同社は、スルメイカに依存しない水産加工製品の拡充にも一段と力を入れている。すでに鮭やホタテ、昆布などイカ以外の水産製品も幅広くそろえ、最近ではマグロなどの新素材を活用した新ジャンルの育成にも意欲を燃やす。畜肉や酪農加工製品の拡大と併せ、多様化する消費者のニーズを着実に取り込んでいるのである。

期待がかかる年末商戦

年末商戦に期待がかかる(編集部撮影)

同社は2016年度決算で、いったん業績見通しを大幅に引き下げたものの、「スルメイカの産地変更やイカ製品の規格変更が想定以上に進んだ」(会社側)として、営業減益幅を縮小した経緯がある。

2017年度は前述のように第2四半期の営業利益は大きく落ち込んでいる。会社側は、海外産切り替えや容量減による採算改善が進むとして、期初に公表した営業利益見通し20.5億円(前期比3%増)を据え置いている。

年末にかけて、家飲み需要はさらに広がる。高水準の営業利益を維持できるかどうかは、冬季の新製品を軸にした、この年末商戦にかかっている。

川上 清市 フリージャーナリスト

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かわかみ せいいち / Seiichi Kawakami

長野県松本市生まれ。学習院大学法学部卒業。日刊自動車新聞、日本工業新聞などの記者を経て、1988年にフリージャーナリストとして独立。業界分析から企業の成功事例、株式投資、資金調達、教育、健康、環境、農業関連など幅広い分野を取材し、執筆活動を続けている。

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