見過ごされる「飛行機内での性犯罪」の実態 航空各社は対策をするべきだ

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大半の航空会社は、暴力やわいせつ行為から、言葉での脅迫や航空機器へのいたずらまで、さまざまな種類の「手におえない乗客案件」に対応する訓練を実施している。

「乗務員は、こうした事案に対応する訓練を受けているが、一定限度までだ」と、航空関係の保安訓練会社グリーンライトのフィリップ・バウム氏は言う。

「世界で行われているほとんどの乗務員保安訓練は、1日で終わる。2日かかることもある。想定される事態はあまりに多様で、あらゆる種類の手におえない乗客を想定してやったら、1週間かかってもおかしくない」

IATAによると、昨年報告があった「手におえない乗客」案件約1万件の約3分の1が、飲酒がらみだった。不適切な性的行為は、わずか2%だ。

「そのような案件は少ないが、われわれの乗務員は危険な事態に対処できるよう、よく訓練されている」と、欧州LCCイージージェット<EZJ.L>の広報担当者は話す。

アメリカン航空はセクハラ案件の特別訓練を導入

アメリカン航空<AAL.O>は最近、ダイバーシティ対策の一環で、セクハラ案件の特別訓練を導入することを決めたと、同社の広報担当者は話した。詳細には言及しなかった。

ユナイテッド航空<UAL.N>のムニョスCEOは今週、社員向けサイトに声明を出し、社員9万人以上に対して、乗客やスタッフによるセクハラ案件には「ゼロ・トレランス(違反事案に容赦しない)」方針を表明した。新たな訓練などには言及しなかった。

米客室乗務員協会が今年実施した調査によると、調査に回答した乗務員の5分の1が、フライト中に乗客による別の乗客に対する性的に不適切な行為を目撃していた。

同協会は、乗客の性的不適切行為に関するポリシーが十分に強調されていないとして懸念を表明。調査対象の半分以上が、こうしたポリシーの内容を知らないと回答した。

インドでも状況は同じだ、とニューデリーを拠点とする弁護士のSatvik Varma氏は言う。「規制が足りない訳ではない。規制の実践と、規制についての知識不足が問題になっているのだ」

(Jamie Freed Aditi Shah 翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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